そこは底か? あそこが底か?

 内外の株価が急落したが、これを実体経済の悪化が律儀に追いかけており、追いついてきた。

 11月17日に発表された日本の7~9月期のGDP成長率は、年率ではマイナス0.4%だった。日・米・欧すべてマイナス成長だ。

 加えて悪化が急なのは、上場企業の収益だ。たとえば、日経平均を一つの銘柄に見立てて、今期の一株利益を計算すると、10月末日は約700円だったが、11月14日現在では600円に下がっている。夕刻のデパ地下の弁当価格のような下げっぷりだ。

 この間の利益(日本経済新聞予想ベース)の減少にあって大きな役割を果たしたのは、トヨタ自動車の業績見通し下方修正だった。

 通期の営業利益ベースで1兆6000億円を6000億円に引き下げる衝撃的な発表だったが、収益の柱である北米市場の悪化は急激で、場合によっては再度の下方修正に追い込まれる可能性もなしとしない。

  自動車は、消費者のマインドの影響を強く受ける耐久消費財であると同時に、ローンが絡む一種の金融商品だ。日本経済は、もう一段悪化する可能性がある。

 2009年に関するIMFの予測では、実質成長率が日本がマイナス0.2%なのに対し、米国がマイナス0.7%、欧州がマイナス0.5%と海外先進国のほうがさらに悪く、希望が持ちにくい。

 加えて、今のところ世界的な投資資金の縮小が米ドルへの資金回帰となって、円以外の通貨に対してはドル高に推移しているが、この資金の動きが一段落すると、次にはドルのレベル修正(ドル安方向への)が起こってもおかしくない。オバマ政権が雇用を優先するとすれば、一方で「強いドルは国益だ」と言いながらも、他方で現実のドル安を容認するような展開になる可能性がある。