このツイートには、(1)自分は岸田氏に21年前の事実を報告した、(2)自分自身は今回ポストに就くことが不適任だと判断した、(3)しかし岸田氏は自分を任命した、という経緯が表現されている。

 これは、政治的に極めて巧みな表明だ。まず、岸田氏に対しては効果的な脅しになっている。任命の決定責任が彼の側にあったことを世間にさらすと共に、高市氏がこの件を理由に辞任した場合に内閣に対して大きな打撃になる可能性を示唆しているからだ。

 また、旧統一教会との関係が高市氏よりも深い政治家は多数いて、この中には彼女の政治的ライバルが複数含まれる。防衛相でも経済産業相でもない今回の経済安全保障担当相というポストは、彼女の政治的な実績と立場を考えると軽量だ。「捨てて惜しいポスト」では全くないだろう。

デジタル相・消費者問題担当相の
河野太郎氏は「お手並み拝見」

 一方、同じ総裁選を戦った候補である河野太郎氏は、デジタル相のポストを悪くないと考えて引き受けたように思われる。菅内閣時代に「印鑑廃止」で大いに注目を集めたのと似た立ち位置だ。

 日本の行政のデジタル化が非常に遅れていることは周知の事実だ。しかし、それだけにかえって、世界的にも先端を行くシステム化とその適用の標準化はやりやすいかもしれないと期待しておこう。

 省庁ごと、自治体ごとに導入されている既存のシステムには、そのシステムを囲い込んで商売にしているシステムベンダーがいる。そのため、彼らが自分たちの利益を守ろうとする際のあれこれには大いに警戒が必要だ。特定のベンダーに「ロックイン(固定)」されないシステムを構築して早急に普及できれば、わが国にとっての功績は極めて大きい。「お手並み拝見」だ。

 また、河野氏が消費者問題担当相を兼務していることも注目に値する。同氏は早速「霊感商法」に関する検討会の立ち上げに言及した。この検討会は、旧統一教会問題への政府の対処として岸田氏に恩を売ることができるかもしれない。一方で、新たな問題を掘り起こして政権のマイナス要素にもなり得るので、大いに注目できる。

 企業の世界に置き換えると、社長を争った候補が3人いて、運良く社長になった1人には能力と人望がなく、敗れた1人は社長を隙あらば批判する構えを見せている。さらに、もう1人の敗者は新しい担当部署で気を取り直したように振る舞っている。組織にあって人間はいろいろだ。