ダイエットや筋トレに何度挑戦しても、結局挫折してしまった…という経験をお持ちの方は少なくないだろう。だが、「自分はダメな人間だ」と落ち込む必要はない。
本稿では、ロングセラー『小さな習慣』より、10年間運動嫌いだった著者スティーヴン・ガイズ氏が、「別人のように肉体改造に成功した」とっておきの方法をご紹介する。(構成/根本隼)

「10年間運動嫌いだった人」が別人のように肉体改造できた、たった1つの理由Photo:Adobe Stock

「30分の運動」を目標にしても失敗続き

 私の場合、自分を変えたいという意気込みはたいてい2週間しか持ちません。いつもそのくらい経つと、何らかの理由であきらめてしまうのです。

 30分の運動は、私にとっては目の前に立ちはだかるエベレストでした。自分が掲げるフィットネスの目標を達成するために、この先どれだけ多くの時間や努力が必要になるのだろうと思うと、そのあまりに大変な道のりに圧倒されてしまったのです。

ふと思いついた「逆転の発想」とは?

 そのとき、(中略)逆転の発想というテクニックをふと思い出し、30分の運動の反対にあるものを考えてみました。

 汗をかきながら不快な思いをして30分の筋トレをする代わりに、腕立て伏せを1回だけするのはどうだろう? それ以上を自分に強いることなく、とにかく1回だけ腕立て伏せをすることを目標にしてみては?

 このばかげた考えを、最初は自分でも笑い飛ばしました。しかし、(中略)30分の運動という目標を達成できないことにうんざりした私は、ついにこう思いました。もういい、とにかく1回だけ腕立て伏せをしよう。私は床に手をつき、1回腕立て伏せをしました。そして、それが私の生活をがらりと変える1回になったのです。

 実際にやってみると、肩が抜けそうになり、ずっと使っていなかったひじはギシギシ鳴って、潤滑オイルが必要なほどさびついていました。それでも、休むことなくさらに何度か続けました。

1回の腕立て伏せが30分の筋トレに発展

 この時点ではもうこれだけでやめるつもりだったのですが、そのとき、ついでに懸垂1回を加えるのはどうだろう、という考えがひらめきました。そこで、懸垂用のバーをセットして1回だけやってみました。それから、あと何回か続けました。

 これで筋肉が温まってきて、ついに、もっとやりたいという気持ちが芽生えてきました。そこで、これならできると思える小さな目標を一度にひとつずつこなしていく方法を続けることにしました。

 簡単すぎるくらいの目標を目の前にぶら下げて少しずつ先に進むのです。すると、無事にその目標をクリアできるだけでなく、それ以上こなせることもありました。挑戦する目標を立ててそれを達成するというのは、どんなに小さな目標でも気分がいいものです。

 こうして、たった1回の腕立て伏せが、絶対に無理だと思っていた30分の筋トレにまで発展したのです。

「ばかばかしいほど簡単な挑戦」が大成功につながった

 その後も、この腕立て伏せ1回チャレンジを毎日続けました。たいていはそれ以上の回数をこなしました。これほどたやすく目標をクリアでき、記録をとぎれさせずにすんだことが驚くほどの快感でした。

 この経験を通して、気がついたことがふたつありました。まず、1日に数回の腕立て伏せをするだけで、体も心も、感じ方がずいぶん違います。自分がたくましくなったと感じ、筋肉も着実についてきました。そして、本当にばかばかしいほど簡単な挑戦さえ、運動は習慣になると気づきました。

 どんなに大きな成功も、そこへ向かう最初の一歩があります。スタート地点に戻ってみれば、すべての始まりになった小さな一歩が見えるはずです。つまり、1回の腕立て伏せが、私の生活に起こったすべての大きな変化の最初の一歩になったのです。

(本稿は、ロングセラー『小さな習慣』より、一部を抜粋・編集したものです)