健康増進普及月間,快眠Photo:PIXTA

 毎年9月は健康増進普及月間。コロナ禍で健康の大切さが身に染みた今、基本の睡眠から、身体をメンテナンスしよう。

 理想的な睡眠時間は7時間だといわれるが、睡眠不足の人が睡眠を改善した場合のメリットは、いまひとつ明らかではなかった。

 そこで、米シカゴ大学のグループは、1日の睡眠時間が6.5時間未満という成人80人(平均年齢29.8歳、男性41人、平均体格指数28.1の過体重)を対象に睡眠改善の健康効果を調べている。

 参加者は、いつも通りの睡眠を2週間続け、15日目に個別の睡眠衛生セッションを受ける群(睡眠延長群)と、そのまま習慣的な睡眠を続ける群(継続群)とにランダムに割り付けられた。

 ほかに就寝時と起床時の記録をつける活動量計の装着、毎朝の体重測定(本人には数値が見えない)などが義務づけられ、あとは普段通りに過ごしている。

 その結果、睡眠延長群ではセッションのかいあって睡眠時間が1.2時間も延長。昼寝の時間も減少した。また、エネルギー摂取量も有意に減った(1日平均270.4キロカロリー減、ご飯中盛りで1膳分ほど)。詳しく調べると睡眠が1時間増えるごとに1日のエネルギー摂取量が162キロカロリー減り、その分体重も2週間で0.48キログラム減少している。

「たった0.48キログラム」と侮るなかれ。効果が持続した場合、3年間でおよそ12キログラムの減量が期待できる計算だ。現実にはそう簡単ではないにせよ、「寝る子は育つ」ならぬ「寝る大人は痩せる」なのだ。

 事実、継続群では同じ2週間で、エネルギー摂取量が1日平均114.9キロカロリー増加し、体重も0.38キログラム増えていた。単純計算で、およそ1キログラムの差がついた。

 良い睡眠は健康のキーでもある。「健康づくりのための睡眠指針(厚生労働省)」では、良い睡眠のために(1)就寝前はカフェインなどの刺激物を避ける、(2)同じ時刻に毎日起床、(3)規則的な食習慣と運動習慣、(4)寝室の照明を暗くする、などを勧めている。

 ようやく過ごしやすい日も増えてきた。酷暑で乱れた睡眠リズムを改善していこう。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)