「睡眠時間を削って頑張った」と自慢をする人は少なくないが、世界のトップアスリートや一流の人ほど睡眠時間の確保を重視する。良質な睡眠は疲労回復のみならず、筋肉の合成を促し、強い肉体をつくるからだ。書籍『PEAK PERFORMANCE 最強の成長術』(ブラッド・スタルバーグ/スティーブ・マグネス著、ダイヤモンド社)を参考に、睡眠と体の強化との関係を深掘りしてみよう。(文/ライター 鈴木 舞)
筋肉をつけたい人が知っておくべき
たんぱく質の異化作用・同化作用とは
同書によると、筋肉を成長させるためには睡眠が促進剤になるという。
「ハードなトレーニングはわれわれを消耗させるが、負荷をかけたあとに休息を取りさえすれば、体は負荷に順応して成長するのだ。特に睡眠による効果が絶大だ」(『PEAK PERFORMANCE 最強の成長術』より)
睡眠がもたらす筋肉への作用は、体が持つ「たんぱく同化作用」「たんぱく異化作用」と深い関係性がある。
筋肉の主な材料はたんぱく質だ。 体内に摂取されたたんぱく質は、消化酵素などの働きによってアミノ酸に分解され、小腸などの消化管で吸収される。その後、アミノ酸は血液中に輸送され、筋たんぱく質の合成に使われていく。このように、アミノ酸が運ばれて筋肉をつくることを「たんぱく同化作用」と呼ぶ。
一方、たんぱく異化作用とは筋肉が分解される働きを指す。基礎代謝という言葉があるように、生命維持のためにエネルギー補給は欠かせない。しかし体外からの栄養補給が不足している場合、体は飢餓状態に陥り、筋肉を分解して体内でエネルギーを捻出しようとする。これが「たんぱく異化作用」だ。
つまり、たんぱく同化作用によって筋肉が合成され、たんぱく異化作用によって筋肉が分解・消費されるというわけだ。
たんぱく異化作用はエネルギー不足によって引き起こされるが、病気が原因の場合もある。慢性疾患による食欲不振や栄養不足は、たんぱく同化作用を低下させるからだ。また、体力が衰えている人が無理に運動をすると、筋肉の消費に対してたんぱく同化作用が追いつかず、たんぱく異化作用が進むということもわかっている。
スポーツを楽しみたい人、丈夫で健康的な体を保ちたい人は、たんぱく異化作用を防ぎ、たんぱく同化作用を促進することがポイントとなるだろう。