営業とは、見込みとなるお客さんにサービスや商品の購入を促し契約を結ぶこと。そのため、これまで営業は「売り込むこと」だと認識されてきました。しかし、人口減少や物価の高騰といった市況の変化によって、売るための営業が選ばれなくなる時代がすぐそこまで来ています。売らずに売れる仕組みとは、具体的に何をすればよいのか? “これからの売り方10のルール”から三つを紹介します。(ファンづくりセールスの専門家・作家、株式会社HIROWA代表取締役、京都光華女子大学キャリア形成学科客員教授 和田裕美)
「幸せになってほしい」という価値基準
いまや、世の中に流通する1日の情報量は59ゼタバイトと言われており、1ゼタバイト=世界中に存在する砂浜の砂の数であることから、その量が気の遠くなるほど膨大な数字であることがわかります。
情報量の膨張に伴い、似たようなサービスや商品が乱立し、かつて独自性で売れていた商品もコモディティー化(汎用品化)が進んでいます。
つまり何が言いたいかというと、人は「何を買うか?」から「誰から買うか?」の時代にシフトしてきているということです。商品の差別化や“売り方の工夫”はもちろん大切ですが、決定的な違いのない二つの商品を比べて、最後にお客さんが選ぶのは「未来を見せてくれた人がどちらか?」なんです。
商品はあくまで商品、それ自体がお客さんの未来を描いてくれるものではありません。商品という媒体を使って、どんな未来が待っているかをイメージさせるのが営業という“人”の役割です。
そんな役割を担う(=期待される)人が、自分本意の目的しかない、しかも「売るのがゴール」と短期の視点のみで考えていたらどうでしょうか? 気持ち良く「契約したいです」とは言えませんよね。買った後の未来が見えないのだから当然です。
営業の価値基準は「お客さんに幸せになってほしい」です。その実現のために商品があります。商品を売るためにお客さんがいるのではない。もし、この価値観がきれいごとだと感じるならば、自分がものを買うときの立場をイメージしてみるとよいでしょう。
次ページからは、こうした価値基準をもちながら、具体的に実践すべき三つのことについて解説します。