間違いなく問題になってくるのは
ダメなときに修復ができない歯科医の存在
H 数年後にいろんな問題が表面化すると考えています。
そもそも米国のインビザライン社が日本でマウスピース矯正を浸透させたことによって、患者さんの矯正治療に対するハードルはだいぶ下がってきました。一方で、歯科医にとってもハードルは下がった。マウスピース矯正治療をちょっとやってみようという先生が、この数年で激増したんですよね。
中には、マウスピース矯正については、矯正医よりも上手な一般歯科医もいると思います。問題はマウスピース矯正で治らなかった場合です。ワイヤーを使った経験がない先生は、リカバリーができない。そこは間違いなく問題となってくるでしょう。
S 僕らも他院でマウスピース矯正をやったという患者さんを診ることがあるんですけど、「え? これで終わったんですか、まだ途中ですよね」と。
sp ありますね。オープンバイト(開咬、奥歯はかんでも前歯や臼歯がかみ合っていない状態)になってしまっている。
S 臼歯部も開いている人がいますね。
H 臼歯部のオープンバイトはすごく多くて、マウスピース、アライナー独特の症状です。ワイヤーではほとんど起こらない。
今、マウスピース矯正はブームが続いていますが、格安マウスピースを含めて、検査や診断を正しくされていないものは、いずれ淘汰されることになるでしょう。
インビザラインでも、治らなくてもう1回作り直すリファインメント(追加アライナー)の患者数がどんどん増えてたまってしまい、結局、他の患者さんを診られないクリニックもあるようです。治らないので終わらせられないと。今後、問題になってきそうです。
sp それはもめるでしょうね。
H 特に東京都で増えているという話を聞きました。
S うちは矯正専門医に来てもらっていて、診断後「これは無理やで」と言われたらやらない。「マウスピースで全然OK」と診断されたら、もちろんやる。患者さんも僕らもマウスピースの方が楽ですから。
H 全てをマウスピースで治すって言っている先生もいますけどね。
sp 非抜歯をうたっている先生もいます。
S それは無茶ですね。
H 抜歯か非抜歯かは患者さんの骨格、骨の量や筋肉などを見て診断する。本当にケース・バイ・ケースとしかいえません。
抜歯の場合のメリットとデメリット、歯を抜かないで治療する場合のメリットとデメリットをちゃんと説明してくれる先生がいい。あと自分にできないことは正直にできないと言ってくれる人。私たちがお薦めするいい歯医者は、そういう歯医者なんです。