「自己肯定感」という言葉が取り沙汰されるようになって久しい。しかし、「他人の目なんか気にせず、ありのままの自分を受け入れよう」「承認欲求を今すぐに捨てよう」──そんなポジティブな言葉を目にするたび、息苦しくなってしまう人も多いのではないだろうか。
自分を好きになれない、どこにいても疎外感があり、誰にも本音を打ち明けられない……そんな不安を解消するために必要なのは、「今すぐに使えるハウツーやライフハック」ではなく、気が済むまで自分と向き合う時間だ。そう語るのは、エッセイ『私の居場所が見つからない。』の著者・川代紗生氏だ。「承認欲求を無くしたいのに、『認められたい』という気持ちをどうしても捨てられない」と葛藤し続け、「承認欲求」から解放される方法を見つけるまでを、8年に渡って綴ってきた彼女のブログは、同じ生きづらさを抱える読者から大きな反響を呼び、10万PV超えのバズを連発。その葛藤の記録をまとめた本書は、「一番言ってほしかったことがたくさん書かれていた」「赤裸々な感情に揺さぶられ、思わず泣いてしまった」など、共感の声が寄せられている。
そんな「生きづらさをエネルギーに変えるためのヒント」が詰まった1冊。今回は、疲れた心に寄り添う本書の発売を記念し、未収録エッセイの一部を抜粋・編集して紹介する。

あんまりかわいくない方の天然として生まれてしまった悲劇Photo: Adobe Stock

この世には二種類の「天然」がいる

 私は、天然です。

 こういうことを言うと、たいていの場合、「いやいや自分で天然っていう人は本当の天然じゃないから。本物は自覚してないからね、自分の天然さを」と言われる。うん。たしかにそう思う。実際、私もそうだった。「あたし天然なんです~」なんて甲高い声で髪の毛をくるくるいじりながら言う女は往々にして天然ではなく、とても頭がよく観察力のある女性である。

「天然キャラ」にはメリットがあり、は周りから愛されある程度モテると思っているからこそ天然のふりをするのである。本当の天然というのは別に自分が天然かどうかなど気にしていない。ただ「自分らしく」あるだけである。綾瀬はるかしかり。吉高由里子しかり。そして天然の女というのは周りを癒すことができる。ちょっと変なことをしても「まっ、〇〇ちゃんだから仕方ないよね~」なんて言葉で済ましてもらえる。許される。そんな天然がゆえの恩恵を受けたいと思うのは仕方のないことだ。

 私だって何度「天然になりたい」「得したい」「仕方ないなあ、許してあげるよ~とか言われたい」と思ったことか。そうだ、私はずっと天然の人に憧れていたのだ。自分が天然であるということに気がついていなかったからだ。

 そう、私は天然。本当に天然なのだ。信じてくれ。本当なんだって。自分でも気がつかなかったけれど、どうやら、私は天然らしいということがわかってきたのだ。でも天然は天然でも、私は綾瀬はるか側の天然ではない。最近になって、「天然」とひとことに言っても、二種類に分けられるということがわかってきたのである。

多少ツッコミどころがあっても「天然キャラ」が愛される理由

 まず、天然とは何か。それを考えてみよう。綾瀬はるか。吉高由里子。のん。彼女たちに共通するのは「不思議ちゃん」とか「ふわふわしてる」とか「つかみどころがない」とか言われるところだ。そして、このとき何より重要なのは「癒される」空気感を持っているところである。

 ちょっと不思議で、何を考えているかわからなくても、かわいいのである。むしろ何を考えているかわからないからこそかわいいのである。そして癒されるのである。天然の人というのは、世間からずれた発言やちょっと空気のよめない言動をする代わりに、プライドがそれほど高くないことが多い。「私は真っ当な人間でありたい」とか「恥ずかしい思いをしたくない」とか、そういう見栄とか承認欲求とかが一般の人よりも少ないのである。

 だから一緒にいて気が楽だというのはすごくよくわかる。私の友人にも天然かつ愛されキャラの子が何人かいるが、彼女たちに共通するのは「気を使わなくていい」ということだ。「エセ天然」ではなく「本物の天然」だった場合は、彼女たちは周りに気を使わない代わりに、自分に気を使ってもらおうとも大して思っていない。いい意味で自分の世界と周りの世界を区別している。だから楽だし、一緒にいても何も考えなくていい。ぼーっとしていられる。私は基本的にはちゃんと気を使ってくれる人と友達になりたいと思う方だが、ときどき、そういう何も考えなくてもいい人と一緒にいる時間を欲することもある。

 天然の人・「不思議ちゃん」的キャラの人というのは、いい意味でゴーイングマイウェイというか、自分の世界を持っている。自分と周りがずれていることに違和感を覚えない。そういう人種が「本物の天然」だ。いやー、羨ましい限り。

 そう、羨ましい。羨ましい限りである。そうだ。私も行きたかった。そっちの世界に行きたかった。何でこっち側なんだよ。どうせ天然なら「かわいい方の天然」になりたかったよ!!!!