ラブホテル全焼!
夜11時を回った頃、眠らない街、新宿歌舞伎町の一角で、大型ラブホテルが勢いよく燃えていた。白煙が充満する中、若い男と老女が、逃げ惑う利用客を冷静に外へ誘導していた。その様は一人も負傷者を出してはならないという、ホテル従業員の必死さが伝わるものだった。
ホテル入口とちょうど反対側には、足の不自由な老人が心配そうに燃え盛るホテルを見上げていた。そこはホテルの裏手にある、ホテル所有者の自宅母屋のある場所で、幾つかあるホテルの避難通路の一つにもつながっていた。
火の手があがって数分後には、何台もの消防車が現場に駆けつけ放水を開始していたが、ホテルの密集地ということもあり、大型車両が出火場所近隣まで立入れず、思うような成果を上げられない状態となっていた。
何度か大きな炎が上がり、鎮火した頃には最初に出火したラブホテルは全焼、近隣のホテルにも一部延焼する大火災となっていた。その後、消防・警察の現場検証やラブホテル従業員の聴取から、当日ホテルを利用した顧客に怪しい行動があり、その顧客のタバコの火の不始末か、意図的な放火の可能性が浮かびあがった。
現場検証が終わるや否や、封鎖していたロープをくぐって一人の男が捜査員に近づいてきた。その男は、名刺を見せながら担当刑事に幾つかの質問をした。その名刺には見慣れぬ部署名が刻まれていた。
特殊捜査班「SIU」出動!
保険会社には主に人の命を扱う生命保険会社と物の損害や賠償責任、人の傷害などを扱う損害保険会社がある。火災に関係する分野は損害保険会社に所属し、事故が発生した後、原因究明や損害額の調査を行う部門を「損害調査」あるいは「損害サービス」という。