今回の研究では、39頭の老犬を対象に聴力と認知機能のテストを実施するとともに、飼い主に犬の認知機能(canine dementia scale;CADESで評価、高スコアほど認知機能低下が進んでいる)と生活の質(QOL、canine owner-reported quality of life;CORQで評価、高スコアほどQOLが高い)に関する質問票に回答してもらった。次に、犬が聞き取れる音のレベルにより、50dB群(19頭、平均年齢141±14カ月)、70dB群(12頭、平均年齢160±16カ月)、90dB群(8頭、平均年齢172±15カ月)の3グループに犬を分類し、認知機能、QOL、および加齢による聴力低下との関連を検討した。なお、50dBの音の大きさとは静かな冷蔵庫の出す音と同程度であり、70dBの音は食器洗浄機と、90dBの音は離陸する飛行機の出す音とおおよそ同程度である。

 その結果、聴力の低下に伴い、CORQの4つのドメインのうちの活力(vitality)と交友(companionship)のスコアが有意に低下することが明らかになった〔活力のスコア:50dB群6.6点、90dB群で5.4点(P=0.03)、交友のスコア:50dB群6.9点、90dB群で6.2点(P=0.02)〕。

 また、CADESスコアに異常値が認められたのは、90dB群では8頭全て、70dB群では12頭中9頭、50dB群では19頭中8頭であった。認知機能テストの結果についても同様のパターンが見られ、聴力が低下するほど成績が低かった。また、多変量解析の結果から、CADESスコアの高さは聴力の低下と有意に関連することも示された。

 Olby氏は、「ヒトの場合、聴力低下は認知症の最大の予測因子の1つだ。感覚喪失は運動技能の低下に関連するため、聴力低下は高齢者の転倒にも影響する。このことから、ヒトの身体の衰えと神経の衰えが関連することは明らかだ」という。その上で同氏は、「この研究から、老犬にもヒトと同じ関連が見られることが明らかになった。老犬の神経学・生理学的変化を定量化することにより、それをペットの診断や治療に応用できる可能性がある。また、同じ問題を抱えるヒトに応用できるモデルを作製することにもつながるのではないか」と述べている。(HealthDay News 2022年8月12日)

https://consumer.healthday.com/b-8-12-when-older-dogs-hearing-fades-risk-of-dementia-rises-2657840500.html

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