犬の寿命Photo:PIXTA

 犬の1年は人間の7年に相当するというが、実際はどうなのだろう。雌犬は生後1年以内に初潮を迎え子どもを産む。単純に人間の1歳=犬の7歳は無理がありそうだ。

 米カリフォルニア大学の研究チームは、DNAのメチル化――加齢に伴うDNAの変化で、別名「DNAのシワ」とも呼ばれている――を追った老化研究を行っているが、その過程で犬の生物学的年齢の換算式を開発した。

 ちなみに人間の生物学的年齢もこの「DNAのシワ」で推測することが可能で、健康な人は、ほぼ暦年齢と一致する。ただし、何らかの遺伝病やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)などの感染症があると、生物学的年齢の「老化」が加速してしまうのだ。

 犬の話に戻ろう。同研究チームは生後数週間から16歳までのラブラドールレトリバー104頭のメチル化を人間のそれと比較。その結果、少なくともこの犬種の生物学的年齢は、「16×In(犬の年齢)+31」という計算式で割り出せることが判明した。

「In」は自然対数のこと。表計算ソフトや関数電卓で計算できる。

 愛犬が6歳だとすれば、ほぼ人間の60歳になる計算だ。ラブラドールレトリバーの平均寿命といわれる12歳で換算してみると、人間の70歳に相当する。

 犬だって老化とともに食の好みも変わるし、真夏の散歩やドッグランが辛くなってくる。

 それでも飼い主が喜ぶなら老骨にむち打って無邪気に遊んでくれるのが、この毛むくじゃらの友人の愛しいところだ。心身を病んだときに愛犬の存在に癒やされた経験がある人は少なくないだろう。実際、愛犬家は犬を飼っていない人より心血管死リスクが低いという調査結果はいくつもある。

 さて、あなたの愛犬が5歳だとしよう。これまでの5×7=35歳なら「まだまだ走り回れる元気なワンコ」と思ってしまうが、実際の生物学的年齢は「56歳」の中高年だ。そろそろ健康管理に気を遣い、関節や心臓に負担をかける過度な運動は避けてあげたい。思っている以上に彼/彼女たちとの時間は短いのだから。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)