最近芸能人や有名人で「パニック障害」を公表する人が増えている。パニック障害とは、突然前触れもなく、息苦しくなったり、動悸や吐き気、めまいといった症状があらわれ、今にも死んでしまいそうなほどの強い状態になることを指す。その原因はストレスが密接に関係しているともいわれ、人知れず悩んでいる人も多い病だ。今回は2022年8月3日発売の『こころの葛藤はすべて私の味方だ。』(チョン・ドオン著 藤田麗子訳)から、パニック障害の内容について取り上げる。著者のチョン・ドオン氏は精神科、神経科、睡眠医学の専門医として各種メディアで韓国の名医に選ばれている。本書は「心の勉強をしたい人が最初に読むべき本」「カウンセリングや癒しの効果がある」「ネガティブな自分まで受け入れられるようになる」などの感想が多数寄せられている。本書の原著である『フロイトの椅子』は韓国の人気女性アイドルグループ・少女時代のソヒョン氏も愛読しているベストセラー。ソヒョン氏は「難しすぎないので、いつもそばに置いて読みながら心をコントロールしています」と推薦の言葉を寄せている。自己啓発書では物足りなくなった読者に、自分と他人の本心を探り、心の傷を癒すヒントをくれる1冊。今回は日本版の刊行を記念して、本書から特別に一部抜粋・再構成して紹介する。
「死んでしまいそうなほどの不安」
「パニック障害」という言葉を聞いたことはありますか?
なんの前触れもなく、突然、動悸や息苦しさ、吐き気、めまい、手足の震えといった発作が起こり、今にも死んでしまいそうなほどの強い不安を感じる状態のことをいいます。
満員電車や飛行機、バス、エレベーター、美容院、歯医者など、閉じられた空間で「逃げられない」と感じたときに発作を起こすことも多いものです。
スーパーで買い物をしている最中など、思わぬ状況で急に胸がしめつけられ、息苦しさを感じて、動悸が激しくなることもあります。
心臓発作かもしれないとあわてて病院で診てもらっても、とくに異常は見つかりません。
映画俳優のニコール・キッドマンやキム・ベイシンガーがパニック障害を患っていたことをご存じですか?
俳優という職業だけに、さぞかし仕事への支障が大きかったことでしょう。
パニック障害は決して珍しい病気ではなく、治療も可能ですが、隠し通すのは大変です。
ストレスと密接に関係
パニック障害は不安感だけでなく、身体的な症状がとても強くあらわれるという特徴があります。
ストレスと密接に関連していて、脳の“ストレス管理”システムがいきなり誤作動を起こした状態です。
たとえば気持ちが落ち着かないとき、心臓がドキドキするという反応に過敏になり、そのことに怖さを感じてよけいに脈が速くなるという悪循環に陥ります。
現実と自分をつなぐ糸が弱くなった状態を「不安」とすると、「パニック」はしばらくその糸が切れてしまうことです。
人間を数本の糸で動く操り人形にたとえると、糸が伸びきって動きがぎこちなくなってしまうのが「不安」、糸が切れてまったく動けなくなった状態が「パニック」です。
パニックは自分の存在を脅かす危機です。
「パニック」と「恐怖」は引き寄せ合う
「パニック」と「恐怖」はおたがいを引き寄せ合います。
エレベーターの中でパニック発作を経験すると、その後もエレベーターに恐怖心を抱くようになります。
こういう人が家を探すことになったら、高層マンションを選ぶことは決してないでしょう。
飛行機に乗れない人もいます。
デパートなどの人が多い場所を恐れる人もいます。
地下にある飲食店では絶対に食事ができないという閉所恐怖症の人もいます。
社交不安障害があれば、人前で意見を発表することが耐えがたい苦役となります。
公衆トイレを使う勇気がなくて、外出を避けようとする人々もいます。
しかし、パニックは不必要なものではありません。
火災が発生したビルから急いで逃げようとするのも、深い川に入らないように気をつけることができるのも、私たちを本能的に危険から守ろうとするパニックの働きがあるからこそなのです。