最近では女優の深田恭子さんが、そして17年ほど前には皇后雅子さまが発症した病気として知られている「適応障害」。実は、適応障害は誰もがかかる可能性のある最も身近な心の病のひとつで、学校でや職場、家庭などでいつ発症するかわかりません。そこで今回は、精神科医・岩波明さんの新刊『その「うつ」っぽさ 適応障害かもしれません』(青春出版社)から、多くの人が疑問に思う「適応障害」の概要について抜粋紹介します。
「適応障害」とはどんな病気なのか
適応障害は、うつ病や発達障害といったほかの心の病に比べると、どんな病気なのか今ひとつ知られていませんが、本当は誰もが発症するかもしれない病気です。それどころか、「多くの人が適応障害を経験済み」と言っても実は言い過ぎではありません。
あらためて、適応障害とはどんな病気なのでしょう。適応障害は、就職や異動、進学、結婚、離婚といった環境の変化によるストレスが要因で、発症する病気です。不安や抑うつ、焦りなどが強くなり、そのせいで社会生活にも支障を来します。身体の症状も表れます。不眠、食欲不振、めまい、吐き気、頭痛、肩こりなど、人によってさまざまな不調を訴えます。
こうした症状だけに注目するなら、適応障害に特有のものは見られません。よく知られている「うつ病」に、とてもよく似ています。WHO(世界保健機関)が発表した精神疾患の国際分類である「ICD‐10」には、適応障害の症状についての分類が記載されていますが、簡単にまとめるなら、「不安と抑うつが主な症状」で、しかし「症状は長く続かない」のが特徴だということです。