旅行大手のHISは8月30日、「ハウステンボス」の全株式を、香港の投資ファンドに667億円で売却すると発表した。足元で5%台まで落ち込んだ自己資本比率は改善するものの、早くも「次の切り売り事業候補」が取り沙汰される。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
HISがハウステンボスを売却
売却金額は667億円
「あれだけ赤字続きだったハウステンボスをあっという間に黒字回復させたのは澤田(秀雄・エイチ・アイ・エス〈HIS〉会長)さんの偉業だ。気が付けば魅力的な施設に生まれ変わっていた」。ライバルのJTB関係者はこう振り返る――。
旅行大手のHISは8月30日、長崎県佐世保市にあるリゾート施設「ハウステンボス」の全株式を、香港の投資ファンドであるパシフィック・アライアンス・グループ(PAG)に667億円で売却すると発表した。HISはハウステンボスに66.7%出資しており、残る33.3%を出資する九州電力など地元企業5社の持ち分はハウステンボスが買い取る。ハウステンボスの売却総額は約1000億円にも及ぶ。
ハウステンボスは1992年に開業したものの、2003年に会社更生法の適用を申請し経営破綻。10年からHIS傘下となり澤田会長指揮の下でV字回復を果たし、10期連続黒字化を達成した。
HISはハウステンボス株の売却による667億円のうち、特別利益として647億円を22年10月期決算に計上する。
HISの財務はコロナ禍でボロボロだ。22年10月期中間決算で、自己資本比率は5.8%まで落ち込んだ。今回の売却には自己資本比率を高め、今期の債務超過への転落を免れる意味もある。HISは10月の臨時株主総会で、財務の健全化を目的とした減資の決議も行う。資本金を1億円として「中小企業」扱いになることで税負担の軽減を図る。
とはいえ、ハウステンボスの売却や減資を行っても、本業の旅行需要が回復しない目下、HISの懐事情が厳しいことに変わりない。