地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する。
生まれたころの地球
ガスと塵と氷の雲は、超新星でつくり出された元素で満ちていた。新しい太陽のまわりを旋回しながら、雲は惑星系へとまとまっていった。
その一つが地球だ。
生まれたころの地球は、私たちが知っているいまの姿とは全く違っていた。
大気は呼吸に適さない、メタン、二酸化炭素、水蒸気、水素からなる霧だったはずだ。
表面は溶岩で、小惑星や彗星、さらにはほかの惑星との衝突によって、たえまなくかき混ぜられていた。
惑星「テイア」の衝突
そうした惑星の一つが、現在の火星と同じくらいの大きさの惑星「テイア」だった。
テイアは地球の表面をこそげ取るように衝突して粉々になった。
この衝突により、地球の表面のかなりの部分が、テイアの残がいともども、宇宙に吹き飛ばされてしまった。数百万年にわたり、地球には土星のような環がいくつもあった。
46億年前の新世界
やがてその環が合体して、新しい世界、すなわち月が誕生した。すべては、およそ四六億年前のできごと。
さらに数百万年が経ち、地球が充分に冷えると、大気中の水蒸気が凝縮して雨となって降る日がやってきた。何百万年も雨が降りつづいて最初の海ができた。
というより、海しかなかった。まだ、陸は生まれていなかった。
水の世界になった地球
かつて火の玉だった地球は、水の世界に変身した。
でも、状況は穏やかとはいいがたかった。
当時の地球は現在よりも速く自転していたから。
新しい月は、まだ地球に近く、黒い地平線からぬめりと巨大な姿をあらわし、潮の満ち干はまるで津波のようだった。
(本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)