スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。
世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となっている。
ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、
「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」
と語った本書の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。
6/18に「情報7daysニュースキャスター」、7/2に「朝日新聞be on Saturdayフロントランナー」出演で話題の著者が、「最新脳科学に基づく生き抜く力」を紹介する本連載。今回は教育現場の最前線にいる二人の対談後編をお届けしよう。
星友啓(以下、星):前回「“思ったことはなるべく言わないでおこう”が癖になった人たちの末路」について、西澤会長に本質に迫ったお話を伺いました。
今回は、海外の教育と日本の教育の違いに触れながら、日本の教育改革のヒントを探りたいと思います。
日本とアメリカの大学教育の違い
1942年東京生まれ。京都大学文学部哲学科(美学美術史)卒。3年間大学院に在籍。その後、1976年に大阪で現ワオ・コーポレーションを設立。「今の日本を変えるには、教育を根本から変えていかなくてはならない」という持論のもと、北海道から沖縄まで、学習塾“能開センター”や“個別指導アクシス”にて、47都道府県(2022年9月現在)に教育サービスを展開する企業に育て、現在も会長職を務める。2000年にはアニメーション制作をめざしてワオワールドを設立。自ら脚本も手掛けながら映画監督としての活動もスタート。今までにアニメーション映画4作を制作。現在最新作『とんがり頭のごん太~2つの名前を生きた福島被災犬の物語~』をU_NEXTで配信中。親子で楽しめ、心を豊かにするようなメッセージ性にあふれる作品づくりを志す。
西澤昭男(以下、西澤):日本とアメリカでは、教育のやり方もまったく違ってきますよね。
私は京都大学に入りましたが、ちっとも授業が面白くありませんでした。
今もあまり変わってはいないと思いますが、講義を聞いているより、自分で本を読んで学んだほうが早いのではないか、と言われてしまいそうな内容が多かったんです。
アメリカの大学については、その点、どう感じますか?
星:私がアメリカの大学で学んで最初に感じたのが、教育に対する教員たちの熱心さです。
私がいるスタンフォード大学では、各教授はその分野の世界的権威ですから、忙しくていちいち教えてくれないだろうと予想していました。
しかし、実際はトップであればあるほど教育熱心だった。
世界的権威の教授が、教育に関心を持っており、非常に感動しましたね。
やはり、世界的権威になるには、新しいアイデアや人がやったことがないことをやっているわけで、自分のイノベーションをわかりやすく魅力的に説明できなくてはいけない。
そのうえで、支援者を増やし、ゆくゆくは自分のリードする分野の後継者を育て、研究の裾野を広げていくことで、自分の分野がさらに繁栄していく。
世界的権威であればあるほど、教育に力を注いでいるのはそういった背景もあるのだと思います。?
西澤:なるほど。日本と比較すると、そうした教育、特に授業に対する熱量の違いを感じられたんですね。
星:はい。あとは、日本とアメリカとでは、「システムの違い」も大きいです。
アメリカでは、大学側はあまり口出しせず、教授が独立してやれる。自由度がかなり高いですね。授業に関しても、研究に関しても。
チャレンジ精神がなくなってきている理由
西澤:そうですよね。また、日本の学校のシステムの問題もありますが、そもそも教育関係者にはチャレンジ精神のない人が多いように感じます。
私の塾も46年やっているので、結構大手の塾になってきました。
そうすると、大きいところで安定してやっていきたいという思いの人が出てくるんです。
いわゆる安定思考ですよね。
日本は安定思考の人が多く、ただ言われたことを同じようにやっていく風潮が強い。
仕事場や学校でも、新しいことにチャレンジする人がどんどん少なくなっています。
しかし教育というのは、本来は面白くチャレンジできるものだと思います。
だから、もう一回新しいことにチャレンジしていく方向に変えていく必要があるんです。
民間であっても、教育という一番大切な仕事に携わっているのに、このままではいけません。
星:おっしゃるとおりですね。
私の学校も今16年目になりましたが、最初の手探りでやっていた頃は意識しなくてもみんなでイノベーションを起こしていこうと熱量にあふれていました。
もちろん、先生方は今でも、日々最高の授業をやりたいと熱意を持ってやっています。
しかし、現在の枠の中で最適化する方向にどうしてもいってしまいがちです。
新しいことをして失敗するリスクを恐れ、今までと同じことを繰り返す方向にひきずられる傾向がどうしても強くなってきます。
ですから、スタンフォードも新しいテクノロジーや他の教育機関などでの取り組みなどを頻繁に研究する機会をつくり、新しいものの見方に触れることのできる機会を意識的に増やしています。