現代のM&Aで欠かせない一気通貫の体制づくり

 言い換えれば、今後のM&A市場において求められる見識とは、「部分最適からの全体最適への進化」です。特にオンディールからポストディールへとシームレスにつながった一気通貫の体制づくりが必須となります。

 DDの各プロセスで専門家たちによって抽出された具体的なリスクと対策を、横断的に取りまとめる。そのうえで、適切な買収価額を導き出す。時には、双方が買収に前向きであったとしても、リスクの大きさや売り手の売却希望価額と査定した価額との乖離を考慮し、ディールからの撤退を判断する。

 そしてポストディールのPMIが始まる前に「いつまでに、誰が、何を、どのように行う」というアクションプランを練り上げ、かつ、進捗を定期的にレビューしながら方向性や取り組みへの深度を調整していく。そんな役割を担う人材が必要なのです。

 実際、大手や中堅ファームの一部ではこうしたシームレス化を進める試みが始まっています。とはいえ、言うは易しで実行は簡単ではありません。一般的に尖った専門分野で短期間に能力を発揮するDDチームに対して、幅広いテーマに渡り長期間サポートするPMIチームでは求められる能力やスキルが根本的に異なるからです。

 こうした現状を踏まえ、高い意識と幅広い経験が必要という前提で「コンサルタントの視点を持った専門アドバイザリー」の養成は、M&Aに関わる企業にとって今後の課題でしょう。

 M&Aを成功に導くための方法論は日々、進化を遂げています。M&Aの現場で起こっている最新の動向を知ることは、案件の担当者のみならず、経営者にとって必須の事項になりつつあります。次回はDDの内訳や課題について解説します。