秘書官はあくまでも人事異動で比較的ふさわしい優秀な人材が就くのであるが、先ほど述べた通り、人間には相性というものがあり、それが合わないことを理由に大臣から叱責されて、短期間で秘書官を事実上解任(手続き上は人事異動)という例もあるようである。

“西村大臣対応マニュアル”がこれほど問題になった理由

 以上、ザッと解説してきたように、今回の西村経産相への対応のような事例は、程度の差こそあれ、また態様が文書であると口頭であるとを問わず、これまでも存在していたのである。

 そもそも、国会議員についても対応マニュアルも、今回の弁当や土産といったものも含めて、少なくとも口頭では伝えられるし、極めて人格者な議員がいる一方で、怒りっぽい、今風に言えばパワハラが当たり前な議員もいる。

 役人はそうした議員に対してレクをする場合についても、その人となりを調べて適切に対応しようとする。出身校や出身地が議員と一緒だったり近かったりするということをメルクマールとしてレクの人選が行われることもあり得る。

 ではなぜ今回これだけ問題になり、批判の的になっているのか。

 その背景としては、パワハラや過剰とも取れる政治家からの要求に対する国民の目がより厳しくなったこと、情報がインターネットを通じて拡散され、尾ひれはひれが付いて増幅しやすくなったといったこととともに、政治家や大臣という立場を踏まえて身を律することができる政治家が減ってきた、別の言い方をすれば政治家の質が低下してきたといったことがあるのではないか。

 一方、役人の側のマニュアルまで作成する対応については、丁寧で遺漏なき対応に心がけるという考え方によるものであると考えられ、こちらは特段問題視すべきものではないだろう。もっとも、仕事の力のかけ具合をもっと違う方向に使ってくれ、使えるようにしてくれといった批判というより苦言はあり得るかもしれないが。

 今回の一件を経て、政治家諸氏には、お立場を踏まえて自らの身を律して、立場に甘んじて居丈高になることなく、低姿勢と丁寧な態度で職責に励んでいただきたいところである。