企業による新卒社員の獲得競争が激しくなっている。しかし、本当に大切なのは「採用した人材の育成」だろう。そこで参考になるのが『メンタリング・マネジメント』(福島正伸著)だ。「メンタリング」とは、他者を本気にさせ、どんな困難にも挑戦する勇気を与える手法のことで、本書にはメンタリングによる人材育成の手法が書かれている。メインメッセージは「他人を変えたければ、自分を変えれば良い」自分自身が手本となり、部下や新人を支援することが最も大切なことなのだ。本連載では、本書から抜粋してその要旨をお伝えしていく。

「部下のやる気を引き出す上司」は普段どんな言葉を使っているのか?Photo: Adobe Stock

励ます――「相手がやる気になる言葉」で伝える

「励ます」時には、心の底からそう思って伝えることが、何よりも大切なことです。気持ちが伴わなければ、どんな励ましの言葉も空虚なものに響いてしまいます。

 そしてその上で、励ましの言葉をたくさん用意して、相手に合わせて使い分けるようにしましょう。

 自分がやる気になる言葉が、必ずしも相手にとってやる気になる言葉であるかどうかはわかりません。

 例えば、「がんばれ」という言葉が、必ずしも相手をやる気にさせるとは限らないことは、多くの方が経験上知っていると思います。

 言葉の意味は、辞書で調べれば正確に定義されています。しかし、それとは別に、私たちは一つ一つの言葉に対して、自分なりの特別な意味をつけているものです。

 好きな言葉、嫌いな言葉、やる気になる言葉、やる気にならない言葉など、いわば自分だけのオリジナル辞書を持っていると言ってもいいでしょう。

 つまり、相手にとってやる気になる言葉があるのです。それは、他人には簡単にわかるものではありません。

 ですから、支援する際には相手の辞書にある言葉をいろいろ試しながら探し出して、励ますようにする必要があるわけです。

「励ます」時のフレーズ例
「あなたならば、必ずやり遂げることができます」
「応援していますよ」
「私は、あなたがどのような状況になったとしても応援し続けます」
「みんながあなたを待っています」
「夢しか実現しない、という言葉があります」
「チャンスに変えることができない出来事はありません」
「どんな出来事に対しても、感謝することだってできると思います」
「常に勝者になることはできなくても、常に勇者でいることはできます」
「日が沈むから、日の出が見られるんです」

誉める――心の底から、誉める

「誉める」ということは、自分が喜ぶことです。反対に、口先だけの誉め言葉は、相手に不信感さえ与えてしまいかねません。

 また、誉めるためには、誉めるところを見つけ出す力が必要です。そのためには、小さな実績を見つけ出して、前向きに評価します。

 実績がない場合には、物事に取り組む姿勢を評価してもいいでしょう。

 さらに、相手の個性的な部分を長所として受け止めるようにします。特に個性は、短所にもなれば、長所にもなります。

 相手自身が、気がつかないような長所を見つけ出し、誉めることで、やる気にさせることができるようになります。

「誉める」時のフレーズ例
「すばらしい!」
「まさか、ここまでできるとは思いませんでした」
「これはなかなか他の人にはできないことだと思います。やはり、あなたには特別な才能があったのですね」
「私はあの時、あなたはあきらめると思っていました。しかし、あなたは最後まであきらめなかった。うまくいったかどうかよりも、あきらめずに取り組み続けたことがすばらしいことだと思います」
「今日は、確かに売上が予定額に達しませんでした。お客様も二人しかお見えにならず、一日中暇でしたね。でも、その二人のお客様に対して、あなたが誠心誠意接したことはとてもすばらしいことです。なぜなら、あの二人のお客様は必ず百万人のお客様を連れてきてくださいますから」