さらに厳しい状況が懸念される中国経済

 今後、中国の実質ベースの国内総生産(GDP)の成長率はさらに低下する可能性が高い。特に、不動産バブル崩壊の負の影響は大きい。

 これまで共産党政権は、海外からの直接投資を誘致して不動産事業の拡張や工業化を進め、地方政府にGDPの成長目標を課した。そうしたメカニズムの中で、不動産価格上昇が経済成長に重要な役割を果たしてきた。不動産バブル膨張によって、地方政府の収入源である土地譲渡益は増え、高速鉄道などのインフラ投資が積み増され、経済成長率は人為的にかさ上げされてきた。不動産投資の増加は、中国の雇用・所得環境の安定と共産党による一党独裁体制の維持に決定的に重要だった。

 しかし、不動産バブル崩壊によって、共産党政権の経済運営は困難な局面を迎えつつある。過剰投資によって、資本の効率性は低下している。家計、民間企業、地方政府、金融機関まで不良債権は増えている。

 民間企業などのデフォルトはさらに増加すると予想される。ウクライナ危機の発生以降、台湾問題の緊迫化などの懸念も一段と高まった。中国の生産年齢人口の減少もインドやベトナムなどに生産拠点を移転する企業の増加要因になっている。その結果、中国に投資した資金を引き揚げる海外投資家は急増している。

 今後、ネットベースで中国から流出する資金はさらに増える可能性が高い。資産価格のさらなる下落や規制強化など政策の不透明感を嫌い、人民元建ての債券などを売る海外投資家は増え、資金流出はより拡大することが想定される。財産を守るため、海外に資金を移そうとする中国の国民が増えることも考えられる。

 状況によっては、急速に人民元安が進んで中国の外貨準備が減少し、中国経済の本格的な後退懸念が急速に高まる展開も否定できない。海外投資家による資本逃避などによって、中国経済がさらに厳しい状況を迎える恐れは高まっている。