pixta_94253833歯列矯正は高額の自費診療、医療費控除の対象になるのか…?(写真はイメージです) Photo:PIXTA

きれいな歯並びは一生の財産。わが子のことを思い進学や進級の際に子どもの歯列矯正を考える人もいるだろう。しかし、歯列矯正は通常、健康保険適用対象外の自由診療だ。その費用は100万円程度になることも珍しくない。そこで、せめて医療費控除の対象にならないものか、という願いを込めて税法上の扱いを調べてみた。さらに、子どもだけでなく大人の歯列矯正の場合は?インプラントは?(ZEIKENメディアプラス 代表取締役社長 宮口貴志)

100万円は覚悟の歯列矯正
治療費は医療費控除できる?

 子どもの進学や進級を機に、「歯並びを整えてあげたい」と考える親は多いようだ。きれいな歯並びは一生の財産。表情も気持ちも豊かになるし、何よりも、歯並びが悪いとあごの発達やかみ合わせにも影響が及び、健康を阻害してしまいかねない場合だってある。

 問題は、歯列矯正は通常健康保険適用外、つまり100%自費で賄わなければならない自由診療ということだ。一般的なのが歯の表側にブラケットを装着するワイヤー矯正治療である。医療機関や個々の治療内容によって差はあるが、施術費と定期的な通院費などを合わせて70万~130万円程度は見ておいた方がよい。

 中学生の時に歯科医から親知らずの矯正を勧められた娘を持つ著者の知り合いも、子どもがこの春高校生になったことを機に歯列矯正を考えたが、この金額を聞いてさすがにちゅうちょしたという。学費のほかに学校行事や部活にもお金はかかる。今後、塾にも行き始めたりしたら、とてもとても……。

 とはいえ、歯科医からは、親知らずを放置しておくと「不正咬合(ふせいこうごう)」(かみ合わせが悪くなること)を招くと言われた。子どもも治療を希望しており、どうしたものかと頭を抱える日々を送っている。

 だが、結論を言えば「お金で悩んでいるなら、早いうちに矯正治療しておいた方がよい」のである。子どものうちならたいていの場合、歯列矯正治療は医療費控除の対象になるからだ。還付申告をすれば所得税と住民税がいく分か戻ってくる(還付額の計算式は後段の図表2を参照)。

 そう話しても、知り合いは納得いかない様子だ。彼が社会人になった当初、顧客への印象を考えて歯列矯正をしようとしたら、歯科医院で「医療費控除の対象にならないかもしれないが大丈夫か」と聞かれたと言う。

 いや、今回は子どもの場合だ。国税庁は、子どもの歯列矯正に関して次のように「歯の治療に伴う一般的な費用が医療費控除の対象となるかの判断」(*1)に言及している。

(2)発育段階にある子どもの成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。しかし、同じ歯列矯正でも、容ぼうを美化するための費用は、医療費控除の対象になりません。

 つまり、子どもは、審美目的ではなく成長を阻害しないための歯列改善目的なら、矯正治療費が医療費控除の対象になるのだ。

 では、「子ども」は何歳までをいうのだろう? 

*1 医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例(国税庁)