写真:人民元,紙幣写真はイメージです Photo:PIXTA

習近平主席は、台湾侵攻のチャンスをうかがっているようにも見える。それは地政学的リスクを高める要因だ。海外投資家にとって、下落リスクの高まる人民元を保有する意義は低下している。債券などの売却資金をドルに替える海外の投資家は急速に増えている。そうした傾向は、当面続くだろう。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国の経済成長神話は崩壊しつつある

 ここへ来て、人民元の下落に歯止めがかからない。最大の要因として、海外投資家が人民元建ての債券などを売却していることがある。それによって、投資資金が海外に流出している。

 中国人民銀行(中央銀行)は、人民元の下落阻止のため人民元の買い支えを行っているとみられる。それに伴い8月の中国の外貨準備残高は予想以上に減少した。

 それでも、人民元の下落は止まらない。9月中旬には、一時、共産党政権が防衛ラインとしてきた1ドル=7.00元を下回る水準まで人民元が売られた。

 今後も資金流出に歯止めがかからないと、人民元の下落基調は続く可能性が高い。資金流出の背景には、不動産バブル崩壊の負の影響が深刻化し、中国経済が一時の信認を失っていることがある。

 中国の経済成長神話は、崩壊しつつあるといっても過言ではないだろう。当面、海外投資家は人民元建ての金融資産を売却し、中国本土市場からの資本逃避はさらに加速する可能性が高い。