粉飾決算に倒産…「危ない会社」を見極めるキャッシュ・フロー計算書の読解術Photo:PIXTA

世間には「危ない決算書」があふれている。損益計算書上は黒字でありながらも倒産する黒字倒産企業や、不正な会計処理を行うことで事実とは異なる決算書を作り出す粉飾決算企業など、落とし穴は多い。しかし、キャッシュ・フロー計算書を正しく読む技術さえ身につければ多くの危険は回避できる。今回はキャッシュ・フロー計算書の読み解き方について、具体例を交えて解説しよう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

倒産&粉飾を見抜く上で
キャッシュ・フローが重要な理由

 今回からは、倒産企業や粉飾決算企業の決算書データを使って、「危ない決算書」の読み解き方について解説していく。今回は、最も基本的なデータとなる連結キャッシュ・フロー決算書(以下、CF計算書)の読み解き方について見ていこう。

 上場企業などでCF計算書の作成が義務付けられたのは、2000年3月期(正確には99年4月1日以降に開始する事業年度)からで、CF計算書は比較的歴史の浅い財務諸表だ。「勘定合って銭足らず」という言葉がある。これは、損益計算書(P/L)上は黒字でありながらも倒産してしまう、「黒字倒産」の状況を表したものだ。

 P/L上の損益は黒字であったとしても、支払いに必要な資金が不足すれば、企業は倒産してしまう。そのため、CF計算書を見ることで、会社における現金の動きを把握し、支払いに必要な現金が十分に足りているのかを知ることが倒産の危険性を見抜く上で重要なのだ。

 また、CF計算書は粉飾決算を見抜く上でも重要な武器となる。粉飾決算企業では、P/Lはきれいに見えるようお化粧されているが、CF計算書には苦しい台所事情が表れてしまう。