10月11日から、入国者数の上限と訪日ビザが撤廃されインバウンドが解禁されます。待望の解禁ですが、実は、観光業界には素直に喜べない事情があります。このインバウンド解禁には三つの「死角」が潜んでいるからです。(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
インバウンド解禁で
観光業界は復活するのか
いよいよ10月11日から、訪日外国人の観光、すなわちインバウンドが実質的に解禁になりそうです。新型コロナの水際対策に関する入国者数の上限を撤廃すると同時に、訪日外国人によるビザなし個人旅行も解禁されるといいます。
「待ちに待った」というべき、政府の方針転換でしょう。業界の期待感としては参院選があった7月は無理だとしても、本当は旅行シーズンである8月にでもインバウンドを解禁してほしかったところです。
解禁が遅れた理由は、オミクロン株による第7波がなかなか収束せず、今年の夏休みは自粛ムードが続いていたことでしょう。
ただ、細かい不満を拾うと「このとき、世界で一番感染者数が多かったのが日本だったので、水際対策をする意味はなかったはず」という意見は正論だと思います。
この時期、欧米ではすでにアフターコロナの旅行ブームに沸いていました。日本の解禁が遅れたことで、観光業界にはこの夏得られるはずだった逸失利益が一定規模で生じていたはずです。
とはいえ、秋からのインバウンド解禁でいよいよ観光ビジネスの本格的な復活が期待できます。
コロナ前の2019年を思い起こしていただくと、過去最高、年間3188万人の外国人が日本を訪れていました。東京や大阪、京都の高級ホテルは満室になり、銀座の百貨店には行列ができ、京都など人気の観光地は人の波で身動きもとれない状況でした。
そこから一転してのコロナ禍で、観光業のみなさんは本当に苦しい時代を耐えてきたと思います。およそ2年と8カ月ぶりにいよいよ守りから攻めに風向きが変わるわけで、その意味では業界は重要な転機を迎えることになります。
基本は「どう攻めるか」を考えるべきですが、じつはインバウンド需要を取り込むにあたって手放しでは喜べない三つの死角が存在しています。
観光業界がインバウンド戦略を考えるにあたって、考慮すべき課題を挙げてみたいと思います。