超低金利で国民が失った預貯金の利息収入は164兆円?金融資産所得はどこに消えたかPhoto:PIXTA

銀行預金の金利がほぼゼロに近い状態が約20年近く続いている。その結果、本来国民が受け取るべき金融資産所得が失われた。その所得はどこへ消えたのかを明らかにするとともに、得べかりし所得を復活させるための方策を示唆する。(京都大学大学院経済学研究科フェロー 経済学博士 宇野 輝)

長期にわたり限りなく
ゼロに近い預貯金利

 2023年度予算編成に当たり、岸田政権は「新しい資本主義」を掲げ、金融政策の柱として「貯蓄から投資のための資産所得倍増プラン」を具体的な成長戦略への道と定めた。

 しかし、足元では日本銀行の異次元緩和政策の継続で円安が進行し、加えて資源高によりインフレも進行するなど、国民生活へ及ぼす影響は大きい。

 労働者の最低賃金が過去最高の上げ幅を確保したといえども、その水準は時間当たり千円にも及ばず、名目賃金は過去20年横ばいの状態が続き、先進国の中でも下位に甘んじている。

 振り返ってみると、01年の財政投融資改革により、短期プライムレート(優遇貸出金利)が1.375%に低下し、それ以後、若干金利は上昇したものの、16年の日本銀行のマイナス金利政策実施により短期の貸出金利はゼロに近い水準で推移している。

 銀行の預貯金金利も普通預金0.005%~0.001%と長期にわたり限りなくゼロに近く、定期性預金の金利水準も0.01%~0.001%の間で推移している。

 筆者は国民の預貯金が最適に運用されるべきポートフォリオを研究してきたが、利率が限りなくゼロに近づいた預貯金は、資産運用の対象とはいえず、国民の金融資産所得に全く寄与していない。

 02年~21年の20年間で全国の金融機関からの預貯金への支払利息合計は36兆円であり、平均預貯金残高1011兆円に対して年間あたりの利息は1.82兆円で利回りはわずか0.0018%と極めて低い。預貯金の金利が1%であれば1011兆円の残高に対し年間利息は10兆円になるが、実態は5分の1にも満たない。

 この国民の得べかりし金融資産所得はどこに配分されたのかを次ページから検証していく。