金融センターランキングでシンガポールがアジア首位に、香港逆転の裏に深謀遠慮シンガポールのマーライオン Photo:PIXTA

アフターコロナへかじを切り始めた世界

 香港は、入境者に対する強制隔離措置を9月26日から撤廃し、海外との人的往来を正常化した。また、オーストラリアも10月14日から、コロナ感染者の隔離を原則撤廃し、医療機関などでのマスク着用義務を除いて、コロナ関連の規制がなくなる。

 日本でも、9月23日、岸田文雄首相が短期滞在ビザの免除や個人旅行の解禁を表明してから、海外発日本行きの国際線の予約数が3倍以上に増えたと日本航空は公表している。

 友人たちとの会話にも、2年半ぶりに海外出張や海外旅行の話題が出てきた。

 ある友人から、「もし、いま、海外旅行に出るなら、まずどこに行きたいのか」と聞かれ、私はちゅうちょなく、「まずシンガポールを訪問したい」と答えた。たぶん、香港だろうと想定していた友人が驚き、「なぜですか」と理由を尋ねてきた。

 海外へ行けなかったこの2年半あまりの間、一国のトップの発言動画として、私が見た回数が最も多いのは、シンガポールのリー・シェンロン首相のスピーチだ。わかりやすく語りかけるその中国語のスピーチには、何度見ても感動を覚えた。中国や日本でよく見られるような官僚的な表現や常套句(じょうとうく)が使われておらず、心に響くのだ。

 もちろん、シンガポールを訪ねたいのは、リー首相を追いかけるファンのような動機ではない。ここ数年、大きく躍進したシンガポールの経済力と地位に心が惹かれたからだ。