コロナ禍だけでなく、円安や資材高の影響も相まって、多くの業界や企業のビジネスは混乱状態にある。その状況下でも、苦境を打破できた企業とそうでない企業との間で勝敗が分かれている。そこで、上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回は京王電鉄、東急、京王電鉄、小田急電鉄などの私鉄業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 宝金奏恵)
私鉄5社が好調
阪急阪神・近鉄が大幅増収
企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の鉄道(私鉄)業界5社。対象期間は2022年2~6月の四半期(5社いずれも22年4~6月期)としている。
各社の増収率は以下の通りだった。
・小田急電鉄
増収率:3.5%(四半期の営業収益915億円)
・京王電鉄
増収率:17.3%(四半期の営業収益797億円)
・東急
増収率:5.0%(四半期の営業収益2092億円)
・阪急阪神ホールディングス
増収率:50.7%(四半期の営業収益2290億円)
・近鉄グループホールディングス
増収率:49.8%(四半期の営業収益1872億円)
鉄道業界は、新型コロナウイルスの感染拡大による行動制限の影響を受けて、新幹線や定期券の利用が減るなどの大きな打撃を受けてきた。しかし今春以降は、行動制限も緩和されて人出が増えたことにより、鉄道需要も増えて鉄道業界各社の業績が回復基調にある。
同じ鉄道業界で、JR東日本、JR西日本、JR東海のJR3社が大幅に増収したことは本連載でお伝えした(『JR東海が7割増収でJR東・西も大幅増収、コロナ前と比べた「真の復活度」は?』参照)。そして、私鉄5社もJRと同様に全社が増収となった。
中でも、阪急阪神ホールディングス、近鉄グループホールディングスは5割前後という大幅増収だった。
私鉄の増収の背景は、JRといささか事情が異なっている。「鉄道以外」の事業が増収に大きく寄与しているのだ。一体どういうことか、次ページ以降で各社の増収率の推移を紹介するとともに、詳しく解説する。