コロナ禍、ウクライナ危機、急激なインフレ…。いつ何が起こるかわからない世界を生きる私たちは、どんな変化にも対応できるようにストレスへの対処法を知っておく必要がある。そこでおすすめしたいのが、『ストレスフリー超大全』。多くの人がストレスを感じる「人間関係」「プライベート」「仕事」「健康」「メンタル」の5つのテーマに対して科学的ファクトと対処するためのToDoがまとまった1冊だ。本書を執筆した精神科医の樺沢紫苑氏は、「ストレスは耐え忍ぶものではなく、しなやかに受け流すことが必要である」と言う。本記事では、本書をもとに「前向きに自分を変える方法」をご紹介する。(構成:瀬田かおる)
欠点を直そうとすると陥るワナ
日本を含めた7カ国の若者を対象とした意識調査(平成25年度)で、「自分自身に満足している」日本の若者の割合は45.8%だったそうだ。
半数近くの若者は、自分の性格や外見を変えたいと思っているという。
見方によっては向上心があるように思えるが、欠点にばかりフォーカスすると自分を苦しめることになる。
なぜなら、1つの欠点を直したら、別の欠点が目に付くようになり、いつまでたっても自分に満足することができないからである。
たとえば「話し下手な性格を直したい」と思ったとする。しかしそれは見方を変えると「思慮深い」ととらえることもできるのだ。
自分が欠点だと思っていることが、他人からみたら長所だということもある。
また樺沢氏は「性格を変える必要はありません」と言う。ある日突然性格を変えようと思い立ったところで、そう簡単には変わらないからだ。
欠点を直すのではなく、長所を伸ばす
人に憧れる理由は、欠点が1つもないからではないはずだ。
「要領よく仕事をこなしているから」とか「笑顔を絶やさないから」というように、その人の長所に憧れるのではないだろうか。
欠点をなくそうと努力するより、長所を伸ばしたほうが欠点など目立たなくなる。
終わりのない「欠点の克服」に悩むより、長所を伸ばすことに注力したほうがはるかに前向きでストレスのない毎日になるはずだ。
自己肯定感が高くなる考え方とは?
自分の欠点にばかり意識を向けると、「自分はダメな人間だ」と自己否定に向かってしまう。
人に褒められても「きっと社交辞令に違いない」と、良い出来事もネガティブにとらえてしまうのだ。
やがてその思考はエスカレートし、自分の存在そのものを否定することになる。
そんな自己否定をなくし、自己肯定感を持つには「自己受容」が必要だ。
しかし、自己否定がクセになっている人が、いきなり「あるがままの自分を受け入れろ」と言われても抵抗があるだろう。そこで、本書では「自己受容の4行日記」をすすめている。書き方はこうだ。
② ネガティブ感情に対してフィードバックを書く
③ 今日のポジティブな出来事を3つ書く
④ 最後にポジティブな言葉で締めくくる
本書に掲載されている具体例を紹介しよう。
仕事でミスをして、上司に叱られた。
誰でもミスすることはある。今の自分でOK!
(1) 昼、新しくオープンしたラーメン屋に行ったらおいしかった。
(2) 自分が提出した企画書が高く評価されてうれしかった。
(3) 仕事を早く終えてジムに行って気持ちのいい汗を流した。
今日も全体を通せば楽しい1日だった!(P.255)
ネガティブなことを吐き出すのはストレスの発散になるが、それだけではネガティブ思考が強化されてしまう。ネガティブの後に、ポジティブを加えるのが重要だ。
これまでマイナス思考だった人には、4行日記を書いていて葛藤があるかもしれないが、書き続けることで「プチ変化」「プチ成長」が起きると樺沢氏は言う。
自己否定から自己受容することで、自己肯定へと階段を1歩ずつ登るように変化が起きるのだ。
「自信」が生まれる公式
「自己肯定」と似ているのが「自信」だ。どちらもポジティブに物事をとらえ自分を認めることであるが、本書にはその方程式が紹介されている。
つまり、自己肯定感を高め、成功体験を積むことによって、「自信」が生まれるということです(P.256)
自己否定ではなく自己受容し、自己肯定感を持てる成功体験が増えれば、やがて自信につながるというわけだ。
自己肯定感を高める大きなメリットは、「新しいことにチャレンジできるようになる」ことだ。
どんどんチャレンジすればさらに自信がつき、欠点だと思っていた自分の性格もやがて気にならなくなる。
とはいえ、いつも前向きな気持ちでいられない日もあるだろう。
そんな日は、1回だけネガティブな感情を吐き出してもよい。それを「ストレス発散の1回ルール」と称し、1回吐き出したら、それで忘れることを徹底すべきだと樺沢氏は述べている。
何よりも、自分を変えたければ「行動あるのみ」である。新しい自分になるために、少しずつでも前向きな行動を始めよう。