いまや、自分の会社が5年後、10年後もあるかどうか分からないほど、変化の激しい時代。このような状況でお金に困らず生きていくには、どうすればよいでしょうか? 奥野一成さんの新刊『投資家の思考法』は、その解決策を投資という観点で提示した1冊です。
そこで今回は、奥野さんと作家・元外務省主任分析官の佐藤優さんをお招きし、投資の社会的意義や日本企業が世界で勝つ方法について語っていただいた、本書刊行記念セミナー(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の対談とQ&Aセッションの模様を全2回のダイジェストでお届けします。(構成/根本隼)
>>前編は『「お金が自然に寄ってくる人」に共通するたった1つの考え方』
「投資家の思考法」はどんな仕事にも応用できる
――公務員として働いていますが、職種の性質上、「付加価値」という観点を業務に応用するのが難しいと感じています。「付加価値を創出する構造を見極める」という投資家の思考法は、公務員の仕事にも適用できますでしょうか?
奥野一成(以下、奥野) 投資家の思考法は、公務員を含めてどんな職種にも応用できます。公務員であっても「誰を相手に仕事をしているのか」という視点をきちんと持てば、その相手に対する「自分の仕事の価値最大化」を考えられるはずです。
そのうえで、独自のスキルを身につければ、自分ならではの付加価値を発揮できて、やりがいも感じられると思います。
佐藤優(以下、佐藤) スキルという点では、公務員はさまざまな学び直しの機会を積極的に活用することが大切です。国家公務員なら人事院の研修がありますし、各自治体でも適宜研修が設けられています。民間のセミナーだと高額な費用がかかりますので、それらのチャンスを活かさない手はありません。
「投資で資産を増やせる人、損をする人」の分かれ道とは?
――「①数値化する・可視化する→②比較する→③分ける→④捨てる→⑤組み立てる」という企業分析の5ステップのうち「④捨てる」が最大の難所だと感じました。仮説を組み立てる前に、捨てる部分を適切に見出すためのポイントは何でしょうか?
奥野 「影響の大きい変数」をきちんと把握することが一番重要です。これができないと、思い込みで仮説を練り上げてしまいます。
ただ、企業分析のプロセスで、最も影響の大きい変数を特定するには、経験がものを言います。稀代の投資家ウォーレン・バフェットさんが90歳を超えてもなお第一線で活躍しているのも、その経験値が群を抜いているからです。
投資で大事なのが手を動かすスピードならば、おそらく30歳前後が投資家としてのピークになるはず。しかし、最終的に成功するのは、「捨てる」というステップで試行錯誤をして経験を重ねた人なんです。
これは投資の世界に限らず、「業務のどの部分に力点を置くと成果が出るか」という仕事の勘所にも通じる話ですね。