長引くコロナ禍で、体を動かす機会がメッキリ減ってしまった人は多いはず。日ごろの活動量は減ったのに、なぜか食欲は減らない。飲食での摂取カロリーは多いのに、体を動かしての消費カロリーが減ってしまったのでは、太ってしまうのは当たり前かもしれない。そうこうするうちに内臓脂肪が蓄えられて、お腹がポッコリとせり出し、以前はすんなり入っていたズボンがパツンパツンになってしまったなんてことも。
それだけではない、もっと深刻な問題もある。骨の弱体化だ。外出することが減って日光を浴びる機会が少なくなると、ビタミンDが不足することによってカルシウム不足になり、骨が弱体化してしまうのだ。そのうえ運動不足になると骨への刺激が減り、これも骨の弱体化を招く原因になる。とくに高齢者は「転倒→骨折→寝たきり→認知症」と骨の弱体化による“恐ろしい負のスパイラル”に陥るリスクが高い。
そこで参考にしたいのが、『世界一受けたい授業』(日本テレビ系)、『金スマ』(TBS系)、『体が硬い人のための柔軟講座』(NHK)などで話題のフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一氏の著書『10年後、後悔しない体のつくり方』(ダイヤモンド社)だ。本書は、中高年はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳も体も若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、骨を強くする「骨トレ」の手法を紹介する。
(監修:田畑クリニック院長 田畑尚吾 医師)

【『世界一受けたい授業』で話題】<br />「体脂肪」よりも「骨」に注目! 年をとるほど“骨が命とり”になるPhoto: Adobe Stock

運動不足だと筋肉だけでなく「骨」も減る

【『世界一受けたい授業』で話題】<br />「体脂肪」よりも「骨」に注目! 年をとるほど“骨が命とり”になる中野ジェームズ修一
「理論的かつ結果を出すトレーナー」として数多くのトップアスリートやチームのトレーナーを歴任。卓球の福原愛選手やバドミントンのフジカキペア(藤井瑞希選手・垣岩令佳選手)、マラソンの神野大地選手の個人トレーナーほか、数々のオリンピック出場者を指導する。2014年からは青山学院大学駅伝
チームのフィジカル強化も担当。自身が技術責任者を務める東京都・神楽坂の会員制パーソナルトレーニング施設「CLUB 100」は、無理なく楽しく運動を続けられる施設として、幅広い層から支持を集め活況を呈している。著書は『10年後、後悔しない体のつくり方』『いつでも、どこでも、1回20秒で硬い体が超ラクになる! スキマ★ストレッチ』(ともにダイヤモンド社)など多数。

【前回】からの続き 筋肉は運動不足だと痩せ細るという話をしましたが、運動不足だと筋肉だけでなく、骨も減りやすくなります。骨を丈夫に保つうえで、運動の大切さを教えてくれるのは、宇宙飛行士たちです。

地上では「重力」という目に見えない力が加わっていますが、宇宙はほとんど重力がない「微小重力空間」です。そのため、宇宙に滞在している間は、究極の運動不足に陥ります。このことから宇宙では、骨粗しょう症患者の10倍の速度で、骨をつくるカルシウムなどの骨量が失われるそうです。

宇宙開発の初期には、こうした事実が知られていませんでした。微小重力空間で筋肉と骨を失った宇宙飛行士たちは、地球に帰ってくると重力に耐えられず、体力が持ち直すまで自力で立って歩けなかったのです。

食事だけで骨は強くならない

現在、日本も参加している国際宇宙ステーション(ISS)では、筋トレやジョギングをして、骨粗しょう症の治療薬や骨の生成に欠かせない「ビタミンD」などのサプリメントを飲み、骨量の減少を防ぐための対策が講じられています。

こうした対策によって、2009年に4ヵ月半もISSに長期滞在した日本人宇宙飛行士・若田光一さんの骨量は、飛行前とほとんど変わらないレベルで保たれ、地球への帰還直後も介助なしに自力で歩けました。

「骨を強くするにはカルシウムを含む小魚や牛乳などを食べるといい」といわれますが、食事だけでは骨を強くすることはできません。いくら小魚や牛乳からカルシウムをとったとしても、運動しないと骨にとり込まれないのです。骨にカルシウムを定着させるためには、運動による刺激が必要だからです。

運動の刺激で骨に微細な“ひび”を入れる

運動で骨にカルシウムがとり込まれる作用には、大きく2つあります。1つは運動の刺激によって骨に生じる「マイクロクラック」と呼ばれる微細なひびです。運動をして骨に刺激が入ると、実はミクロの単位で骨にひびが入るのです。

ひびが入るといっても悪いことではなく、このひびを修復するために、新たに骨をつくる「骨芽(こつが)細胞」が活性化してカルシウムがとり込まれ、骨が強化されます。

運動でカルシウムを骨に定着させる

2つ目は、運動の刺激で骨に走る「電気」の作用です。水晶は規則正しい結晶体ですが、これに圧力を加えると電気が発生し、マイナス(-)に帯電します。これは「圧電効果」(ピエゾ効果)と呼ばれますが、骨も規則正しい結晶体なので、運動で圧力が加わるとマイナス(-)に帯電します。

一方で、血液中のカルシウムイオンはプラス(+)に帯電していますから、運動で骨を刺激するとプラス(+)のカルシウムイオンマイナス(-)の骨に引き寄せられて、骨に定着しやすいのです。

※本稿は、『10年後、後悔しない体のつくり方』より一部を抜粋・編集したものです。本書には、体が若返るメソッドがたくさん掲載されています。