株式会社の参入に拒否反応を示す社会福祉法人は、株式会社は利潤を追求し保育の質は二の次だと言うが、本当にそうだろうか。社会福祉法人は曇りのない経営をしているのだろうか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介 深澤献)
東京都の認可保育園の9割が加盟する東京都民間保育園協会の事業計画にはこう書かれている。
「公立保育園の民営化については、社会福祉法人を中心に受託していくことを推進する」
現在、全国の自治体は、財政難から公立保育園の民間への委託を進めている。前章で紹介したように株式会社の認可保育園への参入は激しい抵抗に遭い2%以下にとどまっているが、それは新設だけでなく公立の民営化という場面でも同じだ。団体はわざわざ事業計画にそれを明言しているのだから。
そして、株式会社の不遇はなかなか認可が下りないというだけではない。狭き門をくぐったあとも、徹底的に差別されている。
社会福祉法人が保育園を新規に設置することを認可された場合、設備投資のための施設整備補助費が公費として投入される。国からの交付金を財源に、各都道府県が設置する「安心子ども基金」から3年間で2700億円程度が用意されているのだ。
しかし、株式会社が新設する場合には、この施設整備補助費を受け取ることができない。
さらに、運営費でも差がつく。保育園の運営費は、国と都道府県、市区町村で6800億円、親の負担の4500億円によって賄われているが、これはあくまで人員配置などにおいて最適基準を満たすために必要な額でしかない。
そのため、都道府県や市区町村は独自の判断で、ここに補助金を加算しているのだが、株式会社の保育園はこの加算部分が受けられないケースが多い。
しかもその判断は自治体の裁量に任されている。ある保育園経営者は認可を受けたあとに自治体からの運営費加算分をもらえないことを知り「それならやらない」と自治体の関係者に伝えたところ、一転してもらえることになったというから、そもそも制度の運用に合理的なルールなどない。
さらに、社会福祉法人は厚生労働省所管の独立行政法人医療福祉機構から低利で融資を受けられる。東京都には機構からの融資の利子を補給する財団まで存在する。
そして、社会福祉法人の法人税、事業税、住民税、消費税、固定資産税は非課税となっている。
とにかく優遇措置がめじろ押しなのだ。