ポイント2 コンシェルジュ並みのきめ細かな対応で
ひとりひとりの顧客にとっての価値を高める

萩大島船団丸で販売している「粋粋BOX L」2万1600円。その時々に獲れた新鮮な魚が約3kg届く。Photo: GHIBLI萩大島船団丸で販売している「粋粋BOX L」2万1600円。その時々に獲れた新鮮な魚が約3kg届く  Photo:GHIBLI

 商品単価を10倍以上にした二つ目のポイントは、ひとりひとりの顧客にとっての価値を高めるようにしたことです。

「ただ魚を箱に詰めて送るだけでは?」と思うかもしれませんが、そう簡単な話ではありません。直販を始めた当初は、クレームも多かったといいます。

 漁師は魚を取ることに関してはプロですが、魚を届けることとなると違います。注文通りに魚を届けられなかったり、送る途中で温度が上がって魚がグズグズになったり、逆に温度を下げすぎてカチンコチンになったり……。こういった課題をひとつひとつ改善した末に完成したのが、現在の「粋粋BOX」です。

 この課題解決にあたっては、顧客の声を聞くことを第一に進められました。もともと、坪内さんは顧客となる飲食店の店舗を直接回り、一軒一軒との関係を丁寧に築いていました。そのため、何か問題があった際にも顧客が坪内さんに知らせやすく、時には一緒に解決方法を考えてもらえることもあったそうです。

 こうした取り組みを行っていたところ、商品価格は値上げをせずとも自然と上がっていきました。顧客の方から「もっと高い金額を払うから、その分いい魚を送ってほしい」という声が聞かれるようになったのです。

 このようにして改善を重ねた「粋粋BOX」。現在では、海の恵みを新鮮なまま消費者に届けるため、独自の鮮度保冷方法を徹底するなど、6つの約束を掲げるところにまで至っています。

 坪内さんは、「飲食店も、大規模に安価なものを提供するお店もあれば、高級でひとりひとりに対して一品一品を丁寧に提供するお店もあります。魚の流通においても同様で、私たちは後者を目指しています」と話し、「ひとりひとりのお客様の求める要望はそれぞれ違います。それに合わせてきめ細かく対応を変えて魚を提供していくことを大事にしています」と続けていました。

 当初は、市場に出すだけだった魚も、末端の顧客ひとりひとりの要望に合わせてカスタマイズして提供した結果、価値が高まることとなったのです。