「1ページ」との意外な再会

人は「わからない」ものに対してはネガティブに反応する長谷川晋(はせがわ・しん)
MOON-X Co-Founder/CEO
2歳から9歳までアメリカ、シアトルで育つ。京都大学経済学部卒、体育会ハンドボール部主将。2000年に東京海上火災入社、法人営業担当。P&Gで10年間、Pampers・Gillette・BRAUN・SK-IIなどのマーケティングおよびマネジメントを統括。その後、楽天の上級執行役員としてグローバルおよび国内グループ全体のマーケティングを管掌。2015年Facebook Japanの代表取締役に就任、在任中にInstagramの国内月間ユーザー数は810万から3300万に。2019年8月に「ブランドと人の発射台」をミッションに掲げるMOON-X Inc.を創業。現在、自社D2Cブランドを展開すると同時に、共創型M&Aや他社ブランドの支援も展開中。『今すぐ結果がでる 1ページ思考』(ダイヤモンド社)が初の著書。MOON-Xコーポレートサイト:https://www.moon-x.com/ Twitterでは次世代ビジネスリーダー向けに「#ビジネスの戦闘力」を高める情報を発信中:@ShinHasegawa8

 退職後も、私が作ったミーティング用の「1ページ」のフォーマットは、部下に、さらにはその部下に、と広がっていったようです。

 というのも、フェイスブック時代のあるミーティングで、私のフォーマットそっくりに作られた「1ページ」を持ってきたP&G出身の社員がいたからです。

 彼とはP&Gでの勤務時期は重なっていませんでしたから、これには驚きました。「1ページ」をミーティングで活用することは、特にP&Gで義務化されていたわけではありません。「この『1ページ』は使える!」ということで、自然に人から人へと伝わり、広がっていったのであれば、これほど嬉しいことはありません。この本を通じて、さらに多くの方に活用していただければと思っています。

「1ページ」のもう一つの魅力は「一覧性」です。伝えたいことが1枚にシンプルにまとめられているので、パッと見てすぐにわかる。

 人は基本的に、わからないものに関してはネガティブに振れる可能性のほうが高い、と私は思っています。しかし、「こういう話をします」「こういうことを考えています」「こんな感じで進めていきたい」というものがクリアになれば、不安にならずに議論ができる。だから、相手も安心して巻き込まれることができる。

 また、チームであれチーム以外の相手であれ、自分と話すためにいろんなことを考えて準備してきてくれたということは、間違いなく伝わると思います。リスペクトを持って向き合おうとしていること自体、相手にはポジティブに映るのです。

 加えて、「1ページ」で意外だったことは、時間配分にも使えることです。「1ページ」があることで、共有したり討議したりしないといけないことを、バランスよく時間内にすべてカバーすることができました。

「1ページ」でどの項目にどのくらいのスペースを取るか。これは、実際にその部分のディスカッションに割きたい時間にほぼ比例させています。例えば全体で1時間のミーティングなら、4分の1のスペースを使って書かれている項目は15分くらいかけてディスカッションしよう、という具合です。紙面に占めるスペースの大小により視覚的、直感的にイメージできる。お互いに時間の配分バランスが、「1ページ」によってあらかじめ見える化されているのです。

 その意味では、時間あたりのアウトプットの最大化ができるのが、「1ページ」だと思っています。

 私がメンターとの1 on 1にまで「1ページ」を持っていくのは、せっかく割いてもらった貴重な時間を、最大の価値につなげたいからです。