電気代やガソリン代の価格上昇に対して政府が補助金を出すなどして対策すべきだ――。政府・与党も野党もそれが当然だと考えているようで違和感を覚える。電気代・ガソリン代支援は富裕層優遇の政策であり、効率が悪い。現金での給付を検討する際には、あれだけ所得制限を論じることに熱心だった政治家たちも、ガソリン代を補助するに当たって所得制限を導入しろと言わないのはどうしたことか。価格に訴えかける経済対策は「変わりたくないニッポン」を象徴している。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
電気代やガソリン代などの
物価対策論議への違和感
昨今のニュースや国会中継の音声を聞いていて違和感を覚えることがある。政府・与党も野党も、電気代やガソリン代のような生活に深く関わる商品の価格上昇に対して、政府が対策を打つべきだということを当然視して議論しているように聞こえることだ。「国民の生活への影響は大きい」「いつやる?」「いくらやる?」といった話をしている。
例えば、電気代は仕組み上、今後も上昇が予想されるし、広い範囲の国民生活に対して影響が大きい。その点に異論はない。
一方、電気代が値上がりするのには理由がある。もともとエネルギー価格が上昇していたところに、ウクライナを巡る情勢の緊張などが加わって、原油やLNG(液化天然ガス)の国際価格が高騰した。この背景には、いささか後付け的理由になるが、世界的なSDGs(持続可能な開発目標)ブームのために炭素排出の大きなエネルギー源が忌避されたことがある。その結果、新規の原油開発投資が控えられたことなどの影響が大きい。
そして、資源の国際価格の上昇に加えて円安が影響していることは周知の通りだ。年初には1ドル=115円だったのが昨今150円を超えるまでの円安となったのだから、電気代への影響も大きいはずだ。