ニュースで見聞きした国、W杯やオリンピックの出場国、ガイドブックで目にとまった国――名前だけは知っていても「どんな国なのか?」とイメージすることは意外と難しい。『読むだけで世界地図が頭に入る本』(井田仁康・編著)は、世界地図を約30の地域に分け、地図を眺めながら世界212の国と地域を俯瞰する。各地域の特徴や国どうしの関係をコンパクトに学べて、大人なら知っておきたい世界の重要問題をスッキリ理解することができる画期的な1冊だ。この連載では、本書から特別に一部を抜粋して紹介する。
カリブ海ってどんな地域?
カリブ海はメキシコ湾の南に広がり、中央アメリカ諸国東岸と南アメリカ大陸北岸に囲まれ、大西洋に隣接する海域です。
この地域は西インド諸島とも呼ばれています。それはコロンブスが最初にこの地に到達したとき「インド」に到着したと勘違いしたからです。アメリカの先住民を「インディオ」と呼ぶのもこのためです。
世界中からの移民で文化的に多様な地域となった
北アメリカ大陸はイギリスの、南アメリカ大陸はスペイン・ポルトガルの影響が強いのが特徴ですが、カリブ海地域は異なります。動力船が使われる前は、海上交通では恒常風や海流が決定的な役割を果たしました。
ヨーロッパから新大陸に向かうとき、最初に到達するのはこの地域です。コロンブスの到着以降、イギリス、オランダ、フランスなどが次々にやってきました。島ごとに領有者が異なり、多様な文化が創り出されるきっかけとなったのです。
植民者はこの場所に多くのプランテーションを作りましたが、このことも文化的多様性を作り出す一因になりました。17世紀から19世紀にかけて、アフリカからの黒人が奴隷として導入されました。奴隷制度が廃止されたのちは、契約労働者として多くのインド人や中国人などがやってきました。こうして、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、アメリカからさまざまな人が移り住み、文化的にも多様な地域となったのです。
この地域のプランテーションの代表例がサトウキビです。現在は生産環境の変化で砂糖の生産は激減していますが、砂糖から作るラム酒はいまだにこの地域の特産品です。また、生産量は多くありませんが、最高品質の綿花であるシーアイランドコットンを生産しています。
なぜカリブはタックスヘイブンなのか?
カリブ海と言ったら何を思い浮かべるでしょうか。多くの人は真っ先に「パイレーツ・オブ・カリビアン(カリブの海賊)」と答えると思います。そこで描かれる海賊とは、夢とロマンを求める人々といった感じでしょうか。
現在でも多くの「宝」が隠されています。それは、タックスヘイブンが多いからです。小さな島国では有力な産業が育ちにくいため、法人税や所得税を低くして、外国企業を誘致することに力を入れてきました。
そのため、欧米の多国籍企業や富裕層が税金対策のために資産を移すようになったのです。税もなければ、福祉政策もほとんどなく、「夜警国家」以前の、「海賊」が活躍した世界と似ているのかもしれません。
(本稿は、『読むだけで世界地図が頭に入る本』から抜粋・編集したものです。)