今回は、15年4月に経営破綻した化学系商社「江守グループホールディングス」を取り上げる。中国進出で成功を収め10年で売上高4倍と業績は好調、優良企業に見えた同社はなぜ倒産に陥ったのか。その理由を探ると、海外進出に潜む「落とし穴」が見えてくる。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
江守GHDは
なぜ倒産に至ったのか?
今回は、江守グループホールディングス(以下、江守GHD)の事例を取り上げよう。江守GHDは、福井県に本社を持つ化学品や合成樹脂などを取り扱う商社で、1994年2月に株式を店頭登録、以降04年12月にジャスダック上場、05年4月には東証2部上場となり、06年3月には東証1部への市場変更を果たした。
江守GHDは国際展開に積極的で、中国をはじめとしてASEAN各国にも拠点を持ち、売上規模を急速に拡大させてきた。なかでも、中国における外部顧客への売上高は、14年3月期には連結売上高全体の約70%にまで達していた。
ところが、その後の15年4月に江守GHDは民事再生法の適用を申請し、倒産することになる。同社は11年3月期以降14年3月期まで増収増益を続けており、15年3月期の決算発表を前にした経営破綻となった。
今回は、江守GHDの14年3月期決算時点で開示されていた財務データを使いながら、なぜ江守GHDが倒産に至ったのか、その道筋をたどってみよう。