今回は、20年5月に経営破綻した名門アパレル企業「レナウン」を取り上げる。“コロナ倒産した上場企業”として注目を集めた同社だが、倒産の理由は本当にコロナ禍だけなのか?決算書をひもとくと、コロナ禍前からの「根深い理由」が見えてきた。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)
レナウンが経営破綻した理由は?
決算書からひもとく
今回は、コロナ禍に入ってからの代表的な経営破綻事例として、アパレルメーカーであるレナウンを取り上げる。
レナウンは、2004年3月に旧レナウンとダーバンが株式移転によって設立した会社であり、「アクアスキュータム」「ダーバン」「シンプルライフ」といったブランドを持つ名門アパレル企業だった。
しかしながら、業績悪化に歯止めがかからず、20年5月には子会社を通じて民事再生法の適用を申請。その後、事業再生の道筋を探るも、最終的には主要ブランドの多くを売却した上で民事再生の手続きを断念し、20年11月には東京地裁から破産手続き開始の決定を受けることとなった。
レナウンが経営破綻に至った背景には、コロナ禍によるアパレル需要の減少があったといわれるが、実際のところはどうだったのか。
決算書を基にレナウンが経営破綻した理由について探っていくことにしよう。
以下の図は、レナウンの最後の決算期に当たる19年12月期における貸借対照表(B/S)と損益計算書(P/L)を比例縮尺図に図解したものだ(ただし、19年12月期は10カ月の変則決算である)。
まずはB/Sの左側(資産サイド)から見ていこう。資産サイドで最大の金額を占めているのは、流動資産(約236億9000万円)だ。この流動資産の内訳を見てみると、売上債権(受取手形及び売掛金)が金額にして約134億2300万円も計上されている。