書籍『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング』は、全世界でシリーズ累計700万部を突破したベストセラー。「クラスでいちばん頭のいい同級生」に貸してもらった「天才ノート」というコンセプトの通り、カラーのイラストが満載で楽しく読めて、お子さんはもちろん大人の読者も非常に多い1冊です。担当編集の石田尾孟さん(ダイヤモンド社)に、その魅力を聞いていきます。『アメリカの中学生が学んでいる~』シリーズは、プログラミングのほか、数学、科学、世界史と4冊が同時発売されたので、数学(藤田悠さん)、科学(上村晃大さん)、世界史(田畑博文さん)についても、それぞれの面白さについて一言ずつ語ってもらっています。

アメリカの中学生に学ぶ「プログラミングでScratchやPythonより知っておきたかったこと」

――『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング』は発売11カ月で発行部数3万部を超えるヒット作です。はじめて原著を読んだときの印象は?

石田尾孟(以下、石田尾) 『14歳からのプログラミング』はイラストが非常に多い本で、これなら視覚的に楽しみながら学べるな、と思いました。

 それだけに、翻訳段階で、文字量が増えてしまったり、難しい言葉を使ってしまうと、この本の世界観が崩れてしまうため、言葉選びや文字量は翻訳者さんと工夫しながら進めました。

 原著の『Big Fat Notebook』をすでに読んでいる人が日本にもそれなりにいることが事前のリサーチでわかっていたので、そういった読者が、「日本語版よりも原著がいい!」とならないように、イラストとテキストはほとんど原著とズレが出ないようにしました。そのため、ページによっては1文字単位でテキスト調整を行うなどもしました。

 発売後に、「イラストが豊富で読みやすい」という声を多くの読者からいただき、世界観にこだわってよかったとあらためて感じています。

――翻訳もかなり細かくブラッシュアップしたんですね。

アメリカの中学生に学ぶ「プログラミングでScratchやPythonより知っておきたかったこと」石田尾 孟さん(ダイヤモンド社書籍編集局第2編集部)
2018年に新卒入社後、広告営業を経て、2021年より現職。主な担当書は『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からのプログラミング』『SDGs時代を生き抜く ESG財務戦略』など。

石田尾 そのほかにも工夫した点として、英単語の和訳があります。プログラミングは英語で言語を書くのが主流ですが、なかには、日本では14歳までに習わない単語も出てきます。英語圏の14歳にとっては当たり前の英単語でも、日本の14歳にはわからない英単語をそのまま日本語版に残していると、プログラミングの勉強をしているのに、英語でつまずくリスクも考えられたため、難しい英単語には日本語訳を入れました。

 日本語訳を入れる際、掲載しているプログラミングコードに影響が出ないように(プログラミングコードに日本語を入れると勘違いしないように)翻訳者さんと3パターンほど、掲載方法を模索しながら方針を決めていきました。

――読者層も、お子さんから大人まで幅広そうですね。

石田尾 初学者を意識しながら編集をしていたのですが、「学び直しのために読んでいる」と言っていただけることも多く、いい発見がありました。仕事でプログラミングをされている方から、「概念や用語の整理として使える」といった感想もいただき、嬉しいです。

 500ページを超える本なので、コツコツと毎日読み進めては、その進捗をSNSにアップしてくださる読者もいて、どの部分が刺さったのかなど、私自身勉強になります。

――SNSで進捗を共有してもらえると、ほかの読者の方にとっても500ページを伴走する勉強仲間がいるみたいだし、いいですね。

石田尾 意外でしたが、ScratchやPythonを使用したプログラミング実践パートより、その前にある解説部分のほうが反響が大きいという点は、発売後に得たもう1つの発見です。

 プログラミングの仕事をされていても、「プログラミングとは、そもそもどういうものか」「どういった考え方なのか」という概念的な部分は、意外と意識したことがないという方が思った以上に多くいらっしゃいました。そういった読者にとっては、頭の中の知識をつなぐ役割として、本書がお役に立てたのではないかと思っています。

――これから、この『14歳からのプログラミング』を手に取る読者の方に、おススメのページを教えてください。

石田尾 1時間目、つまり第1章「コンピュータ科学って何?」が特におすすめです。最初のページなのですが、多くの方がなんとなく感じている「プログラミングは難しそう……」という壁を壊してくれる内容になっています。

 私自身も文系出身で、「プログラミング」と初めて聞いたときには、工学系や情報系の学問分野だと勝手に決めつけ、自分には関係ない、と自然に壁を作っていました。ですが、冒頭のページを読んだときに、プログラミングに文理の壁なんてないんだ、と気づき、同時に自分でも楽しめそうというワクワク感がありました。

――最近はかなり「プログラミング」の面白さやその重要性が認知されていますが、それでも学ぶとなるとハードルが高い印象はありますよね。

石田尾 そうなんです。ですから、プログラミングに興味はあるけど難しそう、と思っている初学者の方には、ぜひ最初のページを読んでいただきたいです。

 実際のプログラミング言語の解説ページも、真似すればそのまま実践できるものばかりなので、「まずは手を動かしてみたい!」という方は最初から6時間目~7時間目を読むのもおすすめです。