――この『アメリカの中学生が学んでいる~』シリーズは、石田尾さんに話を聞いたプログラミングに加えて、数学、科学、世界史と4冊が同時発売されました。それらの魅力についても、一言ずつ担当編集に聞いていきます。
 まず『14歳からの数学』を担当した藤田悠さん。「数学」は、14歳で習う内容が日米で違うのでしょうが、かなり平易なところからまとめられている印象でした。

藤田悠 そうですね。日本で14歳が習う内容より、かなり基礎的な内容から入っていますし、イラストがふんだんに使われていてビジュアルが面白いので、「いっそのこと小学校レベルからやり直したい!」というくらいニガテ意識のある人にもオススメできます。アメリカでは、シリーズ中この数学がいちばん売れているようです。

 一方で、日本では高校生でもきちんとやらない、統計的・確率的思考について、5時間目「統計と確率」で触れられているのも特徴です。そのほか、2時間目「比、・比例・百分率」では「チップと歩合」「利息」など日常的に役立ちそうな内容も含まれていて、非常に実践的な面もあります。

 あと、このシリーズ全体について言うと、原著のもともとのコンセプトは「クラスで一番できる友達が貸してくれたノート」なんですが、日本のマーケットでは「ノート」と銘打たれると、読者が自分で書き込んだりしなきゃいけなさそうで敬遠されるのでは、という心配もありました。なので、みんなで話して「ノート」という点は前面に押し出さず、むしろ「参考書」として手に取っていただけるパッケージをめざしました。

――たしかに、厚みが4センチぐらいあるし、ノートより「参考書」といわれたほうが、しっくりきますね。
 次に、『14歳からの科学』を担当したのは上村晃大さんです。「科学」には、物理、化学、生物、地学が含まれているんですね。

上村晃大 そうなんです。個別に参考書がありそうな4つのテーマが、『14歳からの科学』ではこの1冊に全部まとまっています。中学理科で習う気象の話なども出てきます。新型コロナウィルスの蔓延でよく耳にするようになったmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンや、地震が起こる仕組みなど、身の回りにある事象について、非常に平易に解説されていて、実践的ともいえるのではないでしょうか。それも解説が紋切型でなく、くだけた語り口調で、イラストも満載ですし、気楽にパラパラ読めるのがいいところです。

 この本をつくるうえで特に気を付けたのは、専門用語の訳です。1つ1つ日本の教科書で使われている用語に合わせているので、お子さんの独学にも安心してお使いいただけると思います。

――最後に、「世界史」と、4冊のカバーデザインのディレクションを担当した田畑博文さんです。世界史の入門書はいろいろありますが、この『14歳からの世界史』の魅力はどんなところですか。

田畑博文(以下、田畑) 世界史の専門家は、時代ごとに分かれているので、通史を書ける著者はなかなかいません。ですから、本書は「世界史の通史」という点に希少性があるし、「アメリカ人は世界史をどのように理解しているのか、どのように教えているのか」を知ることができるのも、日本人にとって新鮮だし、この本の魅力だと思います。

 それと、通史のなかでも、古代・中世・近世あたりまではさらっと終わっていて、特にフランス革命以降を手厚く解説しているのも、この本の特徴です。

――日本の学校だと、逆に昔のことをじっくりやって、近代・現代はかなり駆け足になってしまうことが多いですものね。

田畑 そうですね。フランス革命以降の民主主義の発展を詳細に描写していること、アメリカの歴史上で女性の参政権が獲得された背景、人種問題への言及が多いことなど、「現在の世界」を理解するためにも役に立つ内容だと思います。大人向けの教養書としても面白く読んでいただけます。

――この4冊のシリーズのカバーデザインは、田畑さんがディレクションされたとか。特に気を配られた点はどのあたりですか?

田畑 先ほど申し上げたように、大人の読者にも読まれる本を目指していたので、子どもぽくなりすぎず、「教養書としての、やさしい、知的な雰囲気」を目指しました。そして、4冊を同時発売するので、1冊ごとに個性がありつつも、シリーズとして店頭に並べていただいても映える――ことを目指してデザイナーの杉山健太郎さんと相談を重ねました。特にカバーの色は何度も検討を繰り返しています。カバーに入っているイラストは、1冊ずつがもつ多様性を表すことを目指しています。世界史であればスフィンクスやオーストリアの女帝など、さまざまな時代のアイコンが入っています。数学なら、図形もあれば平方根もある、といった感じです。

 カバーの色校はこのシリーズを担当した4人の編集者全員で集まって議論し、改良できたので、そういったチームワークの良さも出ているかなと思います。

※参考記事
【マンガ】「世界の大問題やニュースに正直ついていけない…」と思う人が絶対に読むべき4冊の「学び直し本」とは?

アメリカの中学生に学ぶ「プログラミングでScratchやPythonより知っておきたかったこと」