この試合には吉田も出場していた。だからこそ、8年の歳月を経たギャップを前にして余計にショックを受けたのかもしれない。

 さらに追い打ちをかけるように、雨に降られ続けたブラジル戦の観客数は6万3638人と、改修後の国立競技場における最多記録(当時)を更新した。

 この差が何を意味しているのか。ブラジルの来日は21年ぶりであり、このときの会場は茨城県立カシマサッカースタジアムだった。当時と異なり、交通の便に恵まれた都心のスタジアムで、FWネイマールをはじめとするスター軍団のスーパープレーの数々を生で観戦できる。

 日本よりもブラジルへ注がれた関心度の高さが、いわゆる「ライト層」を数万人単位で国立競技場へ引き寄せた。普段はあまりサッカーに関心がなくても、目の前でプレーするのがブラジルならば「ちょっと知っている。じゃあ――」と興味をかき立てられる。

 しかも、人気を左右する「ライト層」は7月20日にも国立競技場に集結した。舞台はネイマールだけでなく、アルゼンチン代表のFWリオネル・メッシ、フランス代表のFWキリアン・エムバペを擁するフランスの強豪パリ・サンジェルマン(SG)の日本ツアー初戦だった。

 観客数は6万4922人と日本対ブラジルを上回った。対戦相手の川崎フロンターレには失礼ながら、ほとんどは世界的なスーパースタートリオの共演がお目当てだったはずだ。パリSGは23日に埼玉スタジアムで浦和レッズと対戦し、このときも6万1175人の大観衆が詰めかけている。

 ほぼ同じスケジュールで、実は日本代表戦も国内で開催されていた。東アジアの4つの代表チーム、日本、韓国、中国、香港各代表が頂点を競ったEAFF E-1サッカー選手権。日本が最終戦で韓国に快勝し、優勝した大会は図らずも別の意味で注目を集めてしまった。

 日本が6-0で香港を一蹴した7月19日の初戦。カシマサッカースタジアムへ足を運んだ観客数はわずか4980人であり、翌日以降のパリSG戦とのギャップが鮮明になった。

 3連休明けの平日のナイトゲーム。茨城県鹿嶋市という場所。そして、国内組だけで編成された選手の顔ぶれ。スタンドが閑散とした理由が挙げられるなかで、鹿島アントラーズの小泉文明代表取締役社長は自身のツイッター(@koizumi)を介して、日本サッカー界全体へ警鐘を鳴らしている。

「カシマだから、火曜だから、香港が相手だからと言い訳せずに協会やリーグと今の代表人気を考えないとサッカー人気の停滞は本当に危機感しかないですね」(原文ママ)