日本のIT分野における安全保障は、「中国排除」という本音をごまかしているために政府調達の制度がこじれにこじれてしまっている。その結果、有望な日本のベンチャーやスタートアップが参入困難な事態を招いている。その闇について知っていただきたい。(イトモス研究所所長 小倉健一)
日本のIT分野の政府調達がたどった
安全保障を巡る「悲惨な末路」
今回は、政府が使うIT分野における安全保障の話だ。文系の読者にとっては、ちょっとだけややこしい話が混ざるが、なるべく分かりやすく書くところから始めたい。
今回問題提起するテーマは、「安全保障に関わるIT分野の政府調達から中国を排除したい」という制度設計の話から始まった。しかし、簡単に結論から言うと、「監査が透明性を欠く上に、お金がかかりすぎて、有望な国産ベンチャー・スタートアップが手を挙げられない」という悲惨な末路をたどってしまっているのだ。
「中国を排除したいとしても、名指しで排除するのはダメだ」という議論の経過を経て、「業者の選定をブラックボックスに、かつ煩雑にする」ことになった。そのため「結果として中国を何とか排除できている」という現状になったものの、非常に残念な状況に陥っているのだ。
日本政府はその後、前述の欠陥を補うための新制度を導入したが、それでも抜本的な解決には程遠いというのが現状だ。そこで今回は、米国が運用している同様の制度を紹介しつつ、日本のIT分野における政府調達でどのように安全保障を確保していけばいいのかを論じたい。