デジタル庁の30億円入札案件が安保の懸念を呼ぶ理由、「Xデー」は4月14日牧島かれんデジタル相(右)と平井卓也前デジタル相(2021年10月5日撮影) Photo:JIJI

デジタル庁の競争入札案件が、日本の安全保障を揺るがしかねないという懸念を読んでいる。想定落札額は30億円規模にすぎないが、実は国の基幹ネットワークの今後を左右する重大案件なのだ。官民を問わず、デジタル分野に精通する関係者の間でざわめきが広がっている。入札期限の「Xデー」は4月14日だ。(イトモス研究所所長 小倉健一)

国の基幹ネットワーク全体に対して
深刻な懸念を訴える状況に

 菅義偉前首相の肝いり政策として、2021年9月に発足したデジタル庁。ソフトウェアの設計図が無償公開されている「オープンソース」の活用や、「アジャイルガバナンス(機動的な行政・管理)」を標榜して改革に着手しようとしている。

 4月1日には、同庁として初めて採用した国家公務員12人の入庁式を行った。うち9人は新卒採用、3人は経験者採用だという。

 一連の人員増強によって同庁全体として約730人の新体制となり、発足時の約600人から増えている。民間出身者も発足時で約200人だったのが、約250人となった。全国紙政治部記者は、これまでのデジタル庁についてこう解説する。

「前任のデジタル相だった平井卓也氏は、週刊文春を中心とするメディアへの情報流出に最後まで頭を悩ませた。民間出身者の多い組織だけに、『外に開かれている』ということなのだろう。霞が関の中央省庁はキャリア官僚といえどもDX(デジタルトランスフォーメーション)に疎い人たちが多く、デジタル庁への期待は高い」

 しかし、そんな期待の大きさとは裏腹に、デジタル政策の混迷は続いている。そのことを象徴しているのが「デジタル庁の入札」だ。実は、総務省関係者が国の基幹ネットワーク全体について深刻な懸念を訴える状況に陥っているのだ。