河野太郎デジタル相は以前、オンライン会議ツール「Zoom」を仕事で使えないことに対して、Twitter上で怒りをあらわにしていた。その後、国会議員と各省庁のやりとりなど一部で解禁の動きがあったものの、なお利用は制限されている。理由の一つは、海外でも懸念が伝えられる「中国リスク」だ。ただ、それとは別にもう一つ、日本独自の残念な事情もあった。(イトモス研究所所長 小倉健一)
世界中で使われているZoomが
霞が関では利用制限
オンラインコミュニケーションツールといえば、米マイクロソフトが提供する「Teams(チームズ)」や米グーグルの「Google Meet(グーグルミート)」などいろいろある。ただ代表格といえば、米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズのサービス「Zoom(ズーム)」であろう(以下、社名はズーム、サービス名はZoomと表記する)。
同社は2011年に中国山東省の出身で米国籍を取得したエリック・ヤン氏によって設立された。他のコミュニケーションツールと比べて、ズーム独自のデータ圧縮技術に優れていたことから会議中の動画品質が安定し、シェア獲得に大きく貢献した。
EmailToolTesterが21年3月に発表したオンライン会議ツールの世界シェアの推計によれば、日本、米国、英国、カナダ、ニュージーランド、韓国などでZoomはシェア1位を獲得しているという。
Zoomは新型コロナウイルス禍にあって、世界中のビジネスシーンや大学・研究機関などで大活躍した。日本でも多くの人が利用したことであろう。
しかしこのZoomだが、霞が関、すなわち日本の官公庁では使用することができない。国会議員と各省庁のやりとりなど一部で解禁の動きがあったものの、なお利用は制限されている。
理由の一つは、海外でも懸念が伝えられる「中国リスク」だ。ただ、それとは別にもう一つ、日本独自の残念な事情もあった。これらの根深い二つの問題についてお伝えしたい。