今夏に明らかとなったNISA(少額投資非課税制度)の拡充案は、投資家をはじめとする面々から大きな期待を呼んだ。ところが、いまだに具体的な話が伝わってこない。岸田政権の退陣などをきっかけに、改革が棚ざらしになるリスクが懸念される。NISA拡充策を幻にしてはもったいない。(経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)
「新しい資本主義」の目玉?
NISAの抜本的改革に暗雲か
岸田内閣が掲げる「新しい資本主義」の目玉的な施策の一つとして、NISA(少額投資非課税制度)の大幅な制度変更と利用枠の拡充が期待されている。しかし、その具体像がなかなか姿を現さない。
「新しい資本主義」という問題設定が現実から大きくずれたものだという批判はこの際棚上げしよう。何かを具体的に改善してくれるなら、取りあえず良しとしようではないか。今のところ「新しい資本主義」には、具体的な成果として実現しそうなものがほとんど見当たらない。今や、唯一残った希望がNISAの改革・拡充という趣なのだ。「ショボい!」と言わないでほしい。何もないよりはいいではないか。
「資産所得倍増」という言葉がたまたま岸田文雄首相の口に上り、その具体的内容として「NISAの抜本的改革」は「新しい資本主義実現会議」のメニューに書き込まれていた。腐っても首相の言葉だ。さすがに「ゼロ回答」はあるまいというのが常識的な見方だった。
しかし、今に至るも具体的細目が伝わって来ない。これはいかにも遅くないか。