――投資家向けコラム「ハード・オン・ザ・ストリート」
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マスクが不要になった今、「リップスティック(口紅)指数」が注目されている。
それは、経済の見通しが暗いとき、消費者は他の自由裁量品の買い物は控えても、口紅のようなささやかな贅沢品には出費を続けるという理論だ。2001年、米化粧品大手エスティローダーのレナード・ローダー会長(当時)はウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対し、「口紅の売り上げが上がっているときは、人々がドレスの購入を渋っているときだ」と語った。同氏は口紅指数を考案した人物として広く知られる。
仏化粧品大手ロレアルのニコラ・イエロニムス最高経営責任者(CEO)は10月に行った電話決算会見で、こうした傾向に言及した。同CEOは、高級な口紅やマスカラでもわずか30ユーロ(約4300円)であり、「手の届くごほうび」になっていると語った。ロレアルの7-9月期(第3四半期)の売上高は、新型コロナウイルス関連のロックダウン(都市封鎖)で中国での販売が鈍化したにもかかわらず、前年同期比9.1%増となった。メイクアップ用品ブランド「カバーガール」などを傘下に持つ米化粧品大手コティが発表した同期間のオーガニックセールス(本業の売り上げ)は9%増だった。
化粧品の売り上げは小売業者にとって希少な好調部門でもある。米ディスカウント大手ターゲットは、10月29日までの3カ月間に化粧品カテゴリーの売り上げが前年同期比で約15%増加したことを明らかにした。ターゲット内に入っている米化粧品小売りウルトラ・ビューティーの店舗の総売上高は同期間で3倍に増加したという。
米百貨店大手メーシーズでは、「メーシーズ」店舗の既存店売上高が減少したものの、傘下の高級化粧品・スキンケア製品チェーン、ブルーマーキュリーの既存店売上高は前年同期比14%増となった。米百貨店大手コールズでも、仏化粧品チェーンのセフォラのコーナーがある店舗は、他店舗よりも高い業績を上げている。