新型コロナが発生して最も大きく変化したのは、外国人観光客が私たちの周りから消えてしまったことではないだろうか。その影響を最も受けたセクターの一つが、トイレタリー・化粧品セクターである。日本の日用品・化粧品市場が直面する課題と今後のあり方を分析する。(三菱UFJモルガン・スタンレー証券 シニアアナリスト 佐藤和佳子)
日用品需要が堅調な一方
化粧品は低迷
日本の日用品・化粧品市場の動向を2019年のコロナ前と比較したのが図1である(19年10月に消費税増税があったため9-10月が通常とは異なる動きになっていることに留意いただきたい)。
日用品は、21年は前年のハンドソープや消毒液の特需の反動減が続くものの、国内需要はコロナ前に比べ数%上昇している状況に落ち着いている。一方、化粧品はコロナ禍での外出控えが続き、また外国人観光客の減少でインバウンド需要が消滅し、総需要はコロナ前の3割減程度が続いている。
10月に入り首都圏のコロナ感染者数が大幅に減少する中で外出は徐々に増えているものの、リモートワークの定着やマスク常態化もあって、日本人の需要だけを見ても従来水準にはまだ届いていない。
世界の化粧品市場は日本と異なり
「リオープニング相場」
20年後半は、日用品株より化粧品株の上昇が大きくなった。中国がコロナを抑え込み、欧米諸国でワクチン接種が開始、国内化粧品需要は低迷するも、株価は経済活動の再開を期待する「リオープニング相場」となったためである。しかしながら変異株の登場、東京五輪もインバウンド再開の契機にならず、日本の化粧品市場は期待ほど回復していない。