ビジネスでは、当たり前のように「論理的に考えること」が求められ、それこそが人間らしい「知性」だ、と一般的に考えられています。しかし、もっと身体的で、もっと直感的な心の「はたらき」である「感性」も、実は人間らしい「知性」と呼べるのではないでしょうか? 感性によって未知のものにアプローチする本連載の第2回では、人間に備わった「知性」と「感性」それぞれのはたらきについて掘り下げます。
世界を、新たな「カタチ」につなぐには?
「分かる」の語源は「分ける」だといわれます。正体の分からない混沌とした塊も、どんどん細かく「分けていく」と、「分かる」ようになる――。確かに、物事を切り分け、分類し、分析していくことは、いかにも人間らしい「知性」の働きです。人類の文明を支える科学は、まさにそのように発展してきました。ちなみに、英語の「science(サイエンス)」も、語源をたどれば「切る」とか「分ける」を意味するラテン語「scindere(シエンデレ)」という言葉に行き着くそうです。
しかし、今あるものを細かく分けていくだけで、新しい価値は生まれるのでしょうか? イノベーション論で知られる経済学者、ヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションの本質を「新結合」だと言っています。私はこれを「創造」と言い換えてもいいのではないかと思っています。創造というと「ゼロから作る」というイメージがありますが、世界はすでに存在し「無」などあり得ません。モノも、情報も、身の回りのあるもの全てが「素材」であり、それらを新しい方法でつなぎ合わせることから、未知のもの、新しいものが生まれていくと思っています。
すると、創造のためには、「分ける力」とは方向性の異なる「つなげる力」も必要になるといえます。この「つなげる」部分を主に担っているのは何か? それこそが「感性」のはたらきだと考えています。ビジネスの世界では論理で「分ける」タイプの知性が優先されやすく、感性から来る直感のようなことは、しばしば稚拙なものとされがちです。しかし、あらゆる人が日々、知性だけでなく、感性もはたらかせている、と私は考えます。