
吉泉聡:TAKT PROJECT代表/デザイナー
会社組織の中では「属人化」がネガティブなものとして避けられがちです。しかし、多くの未知なる価値が個人の感性を起点に生み出されていることを考えれば、属人的なるものを排除することは、未知にアプローチする可能性を狭める態度に他なりません。では、組織が個人の感性を前向きに生かしていくためには何が必要でしょうか。全てを説明しようとして論理化を急ぐのではなく、個人に根差した感性の中に面白さを見いだし、大切に扱うことの重要性について考えます。

未知なるものにアプローチするためには、自分の理解を超えた「わからない」ことに積極的に向き合っていくことが大切です。しかし、情報があふれ、ちょっと検索するだけで、さまざまな疑問の答えがすぐに見つかってしまう現代社会において、「わからなさ」とポジティブに関わっていくことは、意外とハードルが高いのではないでしょうか。身の回りにあるもの全てを情報として処理してしまう前に、ちょっと立ち止まって「わからなさ」を味わってみる。今回は、そんな姿勢の大切さについて考えます。

テクノロジーが進化し、あらゆる情報が溢れる世の中では、ともすれば人間らしい身体感覚を置き去りにしたまま、頭の中だけでアイデアを構築したり、分析したりすることだけが求められがちです。しかし、未知を本当に理解するためには、まだ言葉や論理になっていない情報を、身体でまるごと「感じる」ことこそが重要です。連載第4回では、未知へアプローチする糸口として、いかに身体感覚を豊かにしていくか、そして、そこから得られたものをいかに統合的な知として昇華していくかを考えます。

製品であれサービスであれ、ビジネスでは「これまでにない何かを作る」ことが求められます。しかし新しいものを作っているつもりでも、いつの間にか「どこかで見たような何か」「いつもの何か」になっていた、という経験を持つ人は多いのではないでしょうか。既知から抜け出し、未知へアプローチするためには何が必要なのでしょうか? 連載第3回では、頭の中で組み立てた論理の外側に飛び出すため、「つくる」ことの重要性について掘り下げます。

ビジネスでは、当たり前のように「論理的に考えること」が求められ、それこそが人間らしい「知性」だ、と一般的に考えられています。しかし、もっと身体的で、もっと直感的な心の「はたらき」である「感性」も、実は人間らしい「知性」と呼べるのではないでしょうか? 感性によって未知のものにアプローチする本連載の第2回では、人間に備わった「知性」と「感性」それぞれのはたらきについて掘り下げます。

予定調和な最適解から、見たこともない価値創造へ――。あらゆるイノベーションは、既知から未知へのジャンプを伴う。その鍵は、ロジックの外側にある「感じる力」にあるのではないだろうか。本連載では、さまざまな領域でユニークなデザインプロジェクトを手掛けてきたTAKT PROJECTの代表、吉泉聡氏と共に、さまざまな角度から「感性」を解きほぐしていく。第1回では、発想のジャンプを阻む「分かったつもり」の危うさについて考える。
