ワークマン 店舗エンジニアリング部 需要予測発注グループ マネージャー 森池翔さん、データ戦略部 部長代理 長谷川誠さん、専務取締役 土屋哲雄さん、情報システム部 部長代理 磯海正明さん左から、ワークマン 店舗エンジニアリング部 需要予測発注グループ マネージャー 森池翔さん、データ戦略部 部長代理 長谷川誠さん、専務取締役 土屋哲雄さん、情報システム部 部長代理 磯海正明さん Photo by Mayumi Sakai

業績好調なワークマンは、Excelを使ったデータ経営を徹底していることで知られる。しかし社内にExcelを使ったデータ分析が完全に浸透した結果、すでに「Excelでは足りない」と次のステップに踏み出している。限界までExcelを使い倒した次に、ワークマンが選んだツールとは?(ノンフィクションライター 酒井真弓)

ワークマン、業績好調の秘密は
「Excelの徹底活用」

 ワークマンは、2022年3月期、過去最高の売上高1566億円を達成。2012年3月期と比べ、2.6倍の成長を遂げた。

 ワークマンの強さの秘密は、Excelを使ったデータ分析にある。データ分析といっても、同社はデータサイエンティストのような専門家の採用を一切していない。全社員が社内研修で一通りのExcel関数をマスターし、自ら分析ツールを作り、品揃えや棚割りの改善、店舗在庫の最適化などに生かしているのだ。

 同社専務取締役の土屋哲雄さんは、「数字だけに強い人はいらない」と言う。ワークマンの商品が好きで、加盟店への愛情があり、売り上げを上げたいと思う“普通の社員”が、勉強して自分たちの力でより良い店にする。それが土屋さんの理想であり、「社員の能力の限界が会社の成長の限界でいい」と思っている。

 11月28日に発売された土屋さんの著書『売り上げ2.6倍で業績過去最高! ワークマン式エクセル』では、社員が実際に使っているExcel関数や自作の分析ツールをフルカラーで掲載している。特に小売り関係者が参考にしやすいノウハウが詰まった一冊だ。

 だが、Excelとて銀の弾丸ではない。データ分析が浸透したワークマンには、新たな課題が生じている。それは、分析内容が高度化するにつれ、Excelでは時間がかかるようになってしまったことだ。

 たどり着いた2つの解決策。それは、データ分析に適したプログラミング言語「Python」の習得をはじめとした社内教育の充実。そして、AWSのBI(ビジネスインテリジェンス)ツール「Amazon QuickSight」の活用だ。キーパーソンたちに話を聞いた。

※QuickSight…Amazonが提供する、AWSで使えるBIサービス。クラウド(AWS)内のデータに接続し、結合できる。