郵政創業は今年151年目を迎える。全国約2万4000の郵便局を有し、40万人以上が働く巨大組織である日本郵政グループが今、デジタルによって大きく変わろうとしている。変革をリードするのは、ダイソン日本法人社長や楽天アメリカ法人社長を歴任し、2021年に日本郵政グループCDO兼JPデジタルCEOに就任した飯田恭久さん。そして、郵政一筋20年のDX推進室 室長兼JPデジタルCOO大角聡さんだ。外から来た飯田さん、生え抜きの大角さんのコンビは日本郵政をどう変えようとしているのだろうか。(ノンフィクションライター 酒井真弓)
「お役所文化」が根強いだけに、難易度高のDX
酒井 飯田さんは、2021年4月に日本郵政グループのCDOに就任されました。飯田さんのように外資系企業やIT企業から歴史ある日本企業に転職した方の中には、「まずカルチャーを変革しないと、DXどころか何も前に進まない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。飯田さんはいかがですか?
飯田 文化の違いは、来た瞬間から感じています。日本郵政グループは、2007年の郵政民営化以降、民間企業ではありますが、中身は150年にわたって社会インフラを担い続けてきた組織です。いわゆる「お役所文化」が根強い。私はそれを決してネガティブなことだとは思っていません。郵便物を間違いなく配送する、問題なくお金が下ろせる、保険が使える、こういったことがわれわれの使命ですから。
ただ、通信手段の進化によって、郵便でのコミュニケーションは減っています。ストレートに言えば、郵便局は周回遅れになっていると思うのです。今や多くの民間サービスは、スマホがあれば店舗に足を運ばなくても簡便に手続きができます。お客さまも社員も、郵便局以外では当たり前のようにそういう体験をしています。でも、郵便局にはまだまだ「こちらの紙に記入してください。ハンコはお持ちですか?」というやりとりが残っています。残している意義もあるのですよ。例えば、スマホを持たない高齢のお客さまに、デジタルを強いるわけにはいきません。人のあたたかみが感じられるサービスを提供することは、郵便局のDNAとして守るべきだと思っています。